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18. お帰り2
一条ビルディングの駐車場に車を止め、助手席を確認する。
すやすやと安心しきった顔で眠る人。
食後、車に乗った直後は、一生懸命話をして、眠気を振り払おうとしていた。
だから、着いたら起こしますから寝て下さいと声を掛けたのだ。
大丈夫、起きてるよ。そう言った数十秒後、隣からは静かな寝息が聞こえてきた。
空腹を満たし、眠気に勝てなくなったのだろう。
昨夜は取り調べで一睡もできなかったのだ。寝不足なのも無理ない。
口許が弛む。
これが、自らアラサーを申告する男性の寝顔だろうか。
車を降り、助手席へ回り込む。
抱き上げると、僅かに声を上げる。
「まだ寝ていて平気ですよ」
彼は小さく返事をしたらしかった。
葵はビルに入り、階段を上った。
表から見た2階の事務所は電気が消えていた。営業していないようだ。
3階の右側、302号室のインターフォンを押して直ぐ、大きな足音が聞こえてきた。
勢いよく扉が開き、中から探偵が飛び出してくる。
「一条君!」
叫ぶなり、奪うように風吹の体を抱き寄せる。
そして彼が眠っているのを確認すると、
「ついて来給え」
玄関に背を向け、部屋の奥へと歩き出した。
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