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19. お帰り3

ベッドへ優しく下ろすと、風吹の瞼がうっすらと開いた。 「ゆき…みつ…?」 ベッドの端へ腰掛けた探偵に手を伸ばす。 「何が雪光だ。まったく君は、1人で外に出てはならないと言っているのに勝手に出掛けて事件に巻き込まれて。帰ってこない、連絡も付かない君を私がどれだけ───」 「…ただいま」 ぼんやりとした声。脇に置いた手に、手が重ねられる。 「……お帰り」 応えると、小さく笑ってそして瞼を閉じた。 反対の手で髪を撫で、握られた手を握り返す。 人の心配もそっちのけで、能天気なことだ。 安心したように寝息を立てている。 服を着たままで。シャワーも浴びていない。ベッドは清潔に保ちたいといつも言っているのに。 タオルケットを掛けて、静かに部屋を出る。

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