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27. 無事でよかった2

起きたいと言うと、雪光は身を離して引き起こしてくれた。 着替えを用意してくれると言うから、そのままシャワーを浴びにバスルームへ向かった。 汚れた体を洗い流してすっきりすると、容疑者だった自分の身も漸く潔白になった気がした。 リビングへ行くと、良く冷えたスポーツドリンクがグラスに用意されていた。至れり尽くせりだ。 冷たい飲み物を流し込んで、ソファーに深く腰を下ろして大きく息をつく。 うちに、帰ってこられたんだ─── 落ち着いた。 と同時に、自分がどうやって帰ってきたのか知らないことに気づいた。 「ねえ、僕、葵君に車で送ってもらったと思うんだけど…」 それまで優しかった探偵の、眉が不機嫌にしかめられた。 仲が良くないのは分かってるけど、…ホントあからさまだよなぁ。 「寝ていた君を、名波君が抱き抱えて来たが。送ってすぐに帰っていった」 「えっ、うそ!?やっぱり…。葵君年下なのに、僕かっこ悪い…」 「彼は私と同年齢だろう。私には遠慮なしにおぶさるくせに」 「お前は特別だもん。僕よりおっきくて力もあるし、家族なんだからさ。遠慮なんて、する必要ないだろ」 「…そうか」 ……なんだよ、ニヤニヤ笑って。変な奴め。 探偵は何故かすっかり機嫌を直したらしく、コーヒーでも飲むか等と訊いてくる。 コーヒーより、冷たいものがいいかな。 「もう一杯スポーツドリンク飲んだら、夕飯の買い出し行こうよ。冷蔵庫の中、ほとんど無いだろ」 何か言いたげに口を開き掛けた雪光が声を発する前に、素早く言葉をねじ込む。 「お前が一緒にいれば、何も怖くないよ。一緒に行ってくれるんだろ?」 探偵は半開きの口を閉じると立ち上がり、大きな溜め息をついた。

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