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36. 好きなんだ2
車を駐車場へ駐め、主 に遅れてホールへ入った中川の周りには、吸い寄せられるように小さな女の子たちが集まっていった。
挨拶を交わして、両腕に1人ずつを抱き上げて、春子の姿を探す。
テーブルで折り紙をしている子供たち。勉強をしている子供たち。絵を描いて遊ぶ子供たち。丸く集まっている子供たち。それから……いや、待て。あの丸い集団、あれは───なんだ?
遊んでいる?…いや、勉強か?
部屋の角の異様な空間に、お嬢様の姿を見つけた。
膝をついてしゃがみ込み、子供たちと輪を作り、一人を囲んでいる。
あの小さな輪では、ハンカチ落としも出来ないだろう。
子供たちの年齢も、小学生から中学生とまちまちだ。
その様子は決して楽しげには見えないが……何をしているのだろうか?
「春子さ───風吹!?」
輪の中央で膝を抱えているのが親友だと気づくと、中川の声が大きくなった。
何時もなら「高虎~っ」と嬉しそうに抱き着いてくる彼は膝を抱えたまま、顔を膝にうずめたままで動かない。
泣いているのか?
中川は両腕の子供を床へ下ろすと春子に断り、風吹の頭をやんわりと撫でた。
「…高虎…?」
少しだけ顔を上げる。
泣いて…はいないようだ。が、目が赤い。
風吹は中川から視線を逸らし、すぐに顔を元の位置へ戻した。
春子はどうすればよいのか分からない様子で、ずっと背中を撫で続けている。
「あの…、出かけてて、戻ったら外にこの人がいて、声かけたら泣いちゃって…。俺、大人の人泣かせちゃったの初めてだったから…」
潤也が弱った顔で事の起こりを話す。
「そうですか。ありがとう、潤也」
中川に頭を撫でられると、潤也はバツが悪そうに顔を背けた。
続けて風吹の正面に立つ竜弥が中川に視線を向ける。
「ふぶきのやつ、皆僕のことなんてどーでもいいんだとかってベソかいてんだぜ。オレは好きだって言ってんのに、ぜんぜん聞かねーの」
まだ6歳の竜弥が頭をポンポンと撫でて慰めている。
「竜弥もありがとう。いい子ですね」
竜弥の頭も撫でてやると、子供は声を荒げ、別にいい子じゃねーよ!と頬を膨らませた。
それにしても、「皆僕のことなんてどうでもいい」とは聞き捨てならない。
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