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45. ふぅきといっしょ2

ここの子供たちにとっては、施設の先生が親代わりだ。 だけど本当の親じゃないんだって、みんなは分かってる。 前に春子さんがそう言っていた。 自分たちに親はいないということを知っているんだって。いても会うことは叶わない、そう分かっているんだって。 こんなに可愛い子たちの本当の親ってのは、…一体どこで何をしているんだろう。 子供と離れなくてはならない重大な理由が……? そんな、子供を捨てなきゃいけない程の事情なんて、この世の中にあるんだろうか。 ……いや、それは僕が親になったことがないから、当事者じゃないから、無責任に非難できることなのかもしれない。 だけど、それでも───やるせない……。 「…しょーがねーなぁ」 竜弥が一丁前に溜息を付いた。 「ふぶき、ゆゆかがいっしょに入りたいんだってさ。手伝うから、いれてやろうぜ」 「ん?結由花、お風呂僕と入るのか?」 「うんっ。ふぅきと、いっしょ」 ふぅきって…風吹って言ってんのか。 「そっかー。じゃあ、後で入ろうな」 「はいぉー!」 入ろう、かな。涙でほっぺたびしょびしょなのに、もう笑ってんだもんな。 可愛いな。子供って…。 折角大変な思いして産んだのに、お腹の中で10ヶ月以上も一緒にいたのに、どうして一緒にいられなくなるんだろう。 どうして、こんなに可愛い顔を見られなくなっちゃうんだろう。 ───アタシのお腹ん中、……赤ちゃん、いんの。 あれは、本当に…… ───3ヶ月…なんだ。 僕の子じゃ…なかったんだろうか───? ───どれだけ会ってないと思ってんの?この間って、もう4ヶ月も前の話でしょ。1ヶ月も放置すれば、女なんて簡単に心変わりするんだから。 失った。たったひとりの人。 ───謝んないでよ。浮気したの、こっちじゃん。だからもう…… もう、会えない。 もう…、名前も呼べない………。 俺の大切な、チ─── 「───ふぶき!」

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