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47. 帰ろう1

先生方の用意してくれた夕食を並んで食べて、僕よりも若い男の先生──龍佑先生に手伝ってもらって皆でお風呂に入った。 おじいちゃん先生の浩介先生に結由花を預けて、脱衣所で竜弥の髪を拭いていると、頭からふわりとバスタオルを掛けられた。 「ぽたぽた垂れてる。先に自分の髪、拭きなよ」 「うん、ありがと。潤也」 わしゃわしゃと髪を拭いてくれるから、少し腰を屈める。 「ていうか、大人のクセに中学生に拭かせるとか」 「えへへ~。潤也は優しいなぁ」 「っ……優しくないです、別に」 「ふぶきはオレの頭ーっ!」 「はいはい」 「じゃあ、潤也の頭は俺が拭くかな~」 「別に自分で拭けるんで、龍佑先生はチビたちの面倒見てやっててください」 「風吹さん、ちょっと!潤也が俺にだけ冷たいーっ!」 「あはは、まあまあ」 「風呂上がりには、すいぶん、とんなきゃいけないんだぞ」 園の教えなのかな? 竜弥がそう言うから、一緒に広間へ向かった。 広間の端には水道と、給水機、ドリンクを冷やしている冷蔵庫が置いてある。 「それにしても、ふぶきのおしり、かわいいよな。りゅうすけ先生とは大ちがい」 「なっ…!?」 急に何を言い出すんだ、この子供は!? 「な?じゅん兄」 「……俺に訊くなよ」 「それ言うなら、竜弥のが可愛いよね?潤也」 「だから、俺に振らないでください」 「てーか、潤也凄いいい体してるけど、なんかスポーツやってんの?」 「……水泳」 「水泳かぁ…。僕も水泳やったら腹筋バッキバキになるかなぁ」 「ばかっ!ふぶきはかわいいんだから、はらバッキバキなんかにすんな!」 「えー?いいじゃん、バッキバキ。いいなぁ、潤也~」 「っ…!……腹、触らないでもらえます?」 「なんだよケチー。んじゃ、胸筋」 「もっと触んな!」 「一条君───っ!!」 えっ?───と思う間も無かった。 潤也の台詞をかき消すような大きな声で、名前を呼ばれた。 こんな呼び方をして抱きついてくる人間は、一人しか知らない。 「風吹……っ!」 切ない響きで名前を呼ばれる。 息が止まるほどに、強く抱きしめられる。 なんで、こいつが……ここにいるんだ………?

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