122 / 211
54. 男たちの事情2
翌日曜日、青山探偵事務所には、僕を含め四人の男が集まっていた。
ソファーに座っている僕の前に、高虎の姿。
探偵は仕事のデスクに、葵君はその隣に立っている。
2人でコソコソしている、と思うのは、高虎が僕を見張っている、と思うのは、勘違いなのだろうか。
コーラを飲む。
高虎は珍しく、絶えず何かを話している。
僕は向こうの二人の会話が気になって、高虎の話に集中できない。
高虎が、彼らの会話を僕の耳に入れないようにしているようで、余計にあちらが気になってしまう。
今日は、高虎は秘書の仕事は休日だそうだ。
けれど、春子さんは3階の詩子ちゃんの部屋に来ていて、やはり送り迎えはするらしい。
「仲、いいよね」
上を見ながらぽつりと呟く。
「年齢も19から25って、結構離れてるのに」
「ああ、お嬢様方には共通の趣味があるからね」
「そうなんだ。なに?」
「え?」
「だから、共通の趣味って、なに?」
「それは……」
高虎が不意に黙り込む。
言い辛いことでもないだろうに。春子さんに気を使ってるのかな。
「渋谷署に捜査本部を立ち上げて、私が陣頭指揮を取っています」
高虎の声が止んだことで、向こうの会話が耳に届いてくるようになった。
「それでは、一連の事件を連続殺人と?」
「まだ確定は出来ませんが、無関係のものと決めつけるには───」
「風吹、飲み物のおかわりを頂けますか?」
高虎が、空のグラスを掲げていた。
「え?…あ、うん」
今僕たちのいる一条ビルディング。此処もまた、渋谷署の管轄内だ。
殺人事件…?それもまた、連続……?
「何がいい?」
僕が見つけたあの人は……
「アイスコーヒーをもらえる?」
死なないでいてくれただろうか……?
「うん」
二人の会話から、僕は一人切り離された。
ともだちにシェアしよう!