124 / 211
56. 不安定1
本来は、外部持ち出し禁止の情報である。
協力者がいたとて、協力者から情報を引き出しはすれど、反対に漏らすことは一切禁じられている。
協力者の存在自体がグレーではあるが。
こんな事が公になれば、父の立場も危ういな……。
解ってはいるものの、名波は青山探偵への情報流出を止めることはしなかった。
事は、公安部長の役職よりも重大だった。
他でもない、風吹が巻き込まれたのである。
呉島にストーカー男─坂田昭彦─の情報を送って間も無く、初めの電話が入った。
坂田の死体が発見された、という報せだった。
直後、何かがあったのだろう。直ぐに掛け直すと聞くなり、電話は切られた。
名波は探偵だけを呼びだした。
殺された = もう風吹に危害は及ばない。
2人はそう判断した。
しかし彼らは、掛け直された電話で、新事実を知ることになる。
風吹が容疑者として遭遇した殺人事件、その最重要参考人が坂田だったと言うのだ。
犯人と思われた坂田が殺され、事件は連続殺人の可能性を一気に帯びた。
巻き込まれただけとは言え、何があるか分からない。
そう言えば風吹が、花に水をあげると言ったまま帰らない。
その時になって、2人は風吹の様子がおかしかったことに漸く気が付いた。
ともだちにシェアしよう!