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56. 不安定1

本来は、外部持ち出し禁止の情報である。 協力者がいたとて、協力者から情報を引き出しはすれど、反対に漏らすことは一切禁じられている。 協力者の存在自体がグレーではあるが。 こんな事が公になれば、父の立場も危ういな……。 解ってはいるものの、名波は青山探偵への情報流出を止めることはしなかった。 事は、公安部長の役職よりも重大だった。 他でもない、風吹が巻き込まれたのである。 呉島にストーカー男─坂田昭彦─の情報を送って間も無く、初めの電話が入った。 坂田の死体が発見された、という報せだった。 直後、何かがあったのだろう。直ぐに掛け直すと聞くなり、電話は切られた。 名波は探偵だけを呼びだした。 殺された = もう風吹に危害は及ばない。 2人はそう判断した。 しかし彼らは、掛け直された電話で、新事実を知ることになる。 風吹が容疑者として遭遇した殺人事件、その最重要参考人が坂田だったと言うのだ。 犯人と思われた坂田が殺され、事件は連続殺人の可能性を一気に帯びた。 巻き込まれただけとは言え、何があるか分からない。 そう言えば風吹が、花に水をあげると言ったまま帰らない。 その時になって、2人は風吹の様子がおかしかったことに漸く気が付いた。

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