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58. 不安定3
「…ごめんね、高虎」
給湯室へ訪れた高虎は、探偵殿と名波警視の分のアイスコーヒーも頂けますか、と言った。
うちにはアイスコーヒーディスペンサーがないから、アイスコーヒーはコーヒーマシンで濃い目に淹れたものを氷で一気に冷やして作る。
高虎の分、一杯分が落ちたばかりで、今からまた新たに2人分を落とさなくてはいけない。
わざと時間のかかるよう、時を置いて知らせに来たのだろうか。
僕に余計なことを聞かせないために。
きっと僕を守るために。
なのに僕は、知りたいと思う。
自分に起きていること、それが例え知ることで危険が及ぶとしたって、一人知らずにいるのは嫌だと思う。
こんな僕に守られる価値なんて、本当にあるのだろうか。
「何故謝るのです?」
高虎の掌が、頬に触れる。心配そうな瞳に覗き込まれる。
なんでこんなに大切にしてくれるんだろう……。
心配してくれなんて言ってない、なんて思うほどもう子供じゃない。
だけど、分からない。わからないんだ……。
「もう僕は、外に出ない方がいいのかもしれないね…」
代わりに出てきた言葉は、随分と自虐的。
「ねえ、高虎。お願いしたら、僕を何処かに閉じ込めて、誰にも迷惑が掛からないようにしてくれる?」
「っ……!」
バタン───と大きな音をさせて、高虎が給湯室の扉を開けた。
「探偵殿!」
やけに荒々しい足音。
「春子様のことは何があっても私が守ります。だから───」
高虎は一度両手を強くデスクに叩きつけると、その手で探偵の襟首を掴み上げた。
「貴様が命がけで風吹を守れ!!」
高虎っ、なにやって───!?
2人の鋭い視線が交わって、まるで火花を散らしているようだった。
「中川さん!」
葵君が二人の間に入って止めようとする。
高虎はそれを、左手一本で制する。
「例えすべてを隠すことでその身を守れたとて、それで風吹の心を壊してしまえば、守れたことに意味なんてないだろう!」
「高…虎……っ」
…僕が、……僕が余計なことを言ったからだ。
これ以上心配かけたかったわけじゃ、喧嘩をしてほしかったわけでもないのに……。
「ごめ…っ、ぼくっ…ごめっ…」
なんでだ…?なんでこうなった?なにが始まりで、どうしてこんな……
遊びに行ってストーカーに目を付けられて、1人で買い物に行って倒れてる男の人を見つけて、犯人と間違えられて───
なんだよ。こんなの………ぜんぶ、僕のせいじゃないか…!
僕が、ぜんぶ───!!
「──どうした?お姫様」
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