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62. カラス3
僕や葵君って……、全然タイプが違うじゃないか。
そんないい加減だから、本命と言いつつ相手にされず上手くいかないんだろう。
「ねぇ、お姫様。俺ってそんな、魅力無いかなあ…?」
カラスは懲りない様子で、頬杖のまま、斜め上目遣いに見つめてくる。
艶っぽい視線、男らしく少し大きめの唇。悩ましげな声。
端正な容姿に、瞳に宿る何処か危険な光。
う~~~ん……。女の人相手なら、一撃なのかもしれないなぁ。
「おんなじゲイの人狙えばいいじゃん。いくら色っぽく迫っても、僕や葵くんみたいなノーマルの人相手じゃ効かないだろ、そう言うの」
「えっ、効かない!?ウソでしょ。枯れてんの?お姫様」
「だーれが枯れてるって…?そうじゃなくて、男にそんな目で見られても、普通の男はなんも感じないだろって言ってんの」
「そんだけ無作為にフェロモン放っておいてのその忠告!?」
「フェッ!?…ラモン…?って、そんなの放ってねーよ!」
「青山センセー、一条君がエロいこと言ってきまーす。トイレ借りてもいいですか~?」
「なんだよエロいことって!?なんも言ってないだろ!!」
「そんな事より、君の持ってきた情報を提示し給え」
軽口を叩くカラスと、怒鳴る僕と、───それには相容れない、静かな探偵の声が室内に響いた。
「情報…ね」
カラスは、すっとニヤニヤ笑いを潜めた。ずっと脇に抱えていたノートパソコンを膝の上で開き、起動する。
皆から見えるよう、テーブルの端にディスプレイを内側に向けて置き直す。
「俺はこれは、交換殺人に似たものなんじゃないかと思ってる。…って、センセー、なんか俺のが探偵っぽくない?」
カラスは冗談ぽく探偵を横目に見るけれど、纏う空気はピリリと硬くなった。
「安心して。これネットワークに繋げてないから」
誰に向けてかそう断り、ひとつのアプリケーションを開く。
そこには、20代後半から30代前半と思われる、少し太った女性の写真が映っていた。
「これが…そうか」
「そう。これがセンセーの探してた相手」
ノートブックの画面がパタリと閉じられる。
「でも、センセーと刑事さんだけが全部分かってるってんじゃ、不公平でしょ。お姫様が納得しない」
「探偵殿、名波警視、私にも聞かせていただきたい」
カラスの言い分に高虎が同意した。
葵君が、探偵が難しい顔をしてこちらを見るから、自分も知りたいのだと頷いてみせる。
2人はほぼ同時に、ため息をついた。
「説明は刑事さんでよろしく。センセーは余計な話が長くていけないからね」
先生って呼ばれる人間はな~んであんなに長話が好きかねぇ、なんてカラスが嘯くから、少し気持ちが落ち着いていた僕はつい気が緩んで、笑ってしまっていた。
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