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64. 面倒くさい2

話した、のにな……。 その時は全然、悪い人だなんて思わずに、普通に会話を交わした。 つい最近のことだ。 殺したり、殺されたりなんて、無縁の人に見えたのに……。 もっと、ちゃんと話を聞いてあげるんだった。僕のことを見ていたなら、そんな見張るような真似をしないで、ちゃんと話そうって、言ってあげるんだった。 逃げてしまって、ごめんなさい。 つらい…な…。つらい……。けど、落ち込んじゃいけないんだ。僕が教えろって、知りたいって、そう望んだんだから。 「今容疑者として上がっているのは、坂田の元同僚、姉婿。それに、財布が抜かれていたことから物取りの犯行も視野に入れて捜査しています」 「名波君の見解は?」 「私は───。坂田殺しの前に、まず村越殺しの件。 これには、坂田とガイシャの村越との接点が見当たらない。相手を殺すほど憎んでいたとは思えない。 大抵は、容疑者として逮捕された者に対し、いつかやると思った、突然キレるところがあった等殺人犯となり得る要素を語る知人が存在します。 しかし坂田に対しては誰もが、人を殺めるほどの行動力や根性は無かったように思うと答えました。当然、ナイフを持ち人から金を脅し取る勇気もないだろうと。 坂田が金に困っていたのは周知の事実のようでした。勤めていた会社を、表向きは一身上の都合ですが、横領で懲戒免職になっている。 だからと言って、物取りと考えるのもしっくりこない。そもそも村越の財布はスーツの内ポケットの中、物色した様子もない。 ならば、裏に何かある───それが先ほどのあの写真の女性なのでは?」 「悪くない」 探偵はフッと笑みを零すと、カラスに指示を出して話を進めようとする。 だから、立ち上がって手を伸ばしてそのおでこをピンと弾いた。 不服そうな視線が、こっちに流れる。 「お前、その前に僕に言うことがあるだろ」 「なんだ。構って欲しかったのかい?」 「いらねーよ!そうじゃなくて、手紙!」 「さあ、なんのことか」 「お前が僕から横取りして隠した手紙だよ!」 「……ああ、面倒くさい」 手首を掴み、思い切り引かれた。体がバランスを崩し、勢いのまま半回転させられる。 腰を強く引き寄せられて─── 「ここでおとなしくしているなら、教えてあげよう」 探偵の膝の間に、背中向きに抱え込まれた。

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