139 / 211
71. 過去へ流れる時間≪加藤万里≫
「すごーい、万里さん、これ美味しい」
「そうか。それはよかった」
「…でも、思ってたのとちょっと違ったかなぁ」
「……そうかい」
「次はもっと美味しいお店に連れて行ってね」
「ああ、探しておくよ」
♦ ♦ ♦
「あ!あのバッグかわいい~」
「おお、そうか。じゃあ買ってあげよう」
「今日はこの間のバッグじゃないのかい?」
「ああ、アレね。アタシの手持ちの服と合わないから、使えないの。もっとブラウン系とかぁ?あ、時計も欲しいかも。ダイヤが付いてるやつ」
♦ ♦ ♦
「万里さん。……アタシ、もうダメかも。前の恋人がストーカーになっちゃったの。このままじゃ、殺されるかもしれない」
「稀世…。お前がいなくなったら、俺も生きてはいけない」
♦ ♦ ♦
あの女に言われたから、殺したんだ。
なのにどうしたことだ、あの女は。
「殺してなんて頼んでないわ。お・じ・い・ちゃん」
自分が言ったんじゃないか。
「あの人がいたら、アタシもう生きていけない」
だから、殺したんだ。
「稀世───」
「そうだ。アタシ好きな人、できちゃったの。だからもう、別れましょう」
「そんな…なにを───」
「あらぁ?アナタもアタシにしつこくするの?まだこれから、10年20年は生きたいんじゃないの?」
殺される───!俺もあいつのように、次の男に殺される───!!
ともだちにシェアしよう!