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72. 過去へ流れる時間≪坂田明彦≫

「へぇ…。それで、その子に惚れちゃったの」 「はい。だから、もう……解放してください」 「───はっ!解放?な~んて生意気な男。ダメよ、アンタは死ぬまでアタシに尽くすの。前の男のようにね」 「前の男…?」 「そうよ~。でも最近アイツ、アタシの為に人を殺したとかって、煩いのよねぇ。そんなこと、ウソでも外で言われてみなさいよ。アタシが殺せって言ったみたいになっちゃう」 「毎月、金は入れます。だから…」 「そーだ。アンタは口、堅いわよね。もし誰かを殺しても、アタシのせいだなんて絶対に言わない」 「───人を殺すっなんて…!」 「殺してなんて言ってないわ。ただ、あの男が鬱陶しいなって思っているだけなの。アンタもアタシから解放されるなら、安いもんでしょ? ……あ~、でもやっぱりムリかなぁ?弱虫の昭彦君じゃ」

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