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73. 過去へ流れる時間≪村越栄治≫
「栄治さん、最近支払カードじゃないのね」
「あ、あぁ…。ちょっと親父に、家から追い出されて…」
「えぇっ、そうなの!?」
「ああっ、だが、金が無いわけじゃないんだ!」
「もー、イヤねぇ。それじゃアタシが栄治さんのお金目当てで付き合ってるみたいじゃないの」
「いや、そういうわけじゃ……。すまん」
「いいの!これからも今まで通り、アタシと一緒にいてくれれば」
「ああ。ありがとう…」
「それにアタシ今、栄治さんがいてくれないと怖くてしょうがないの…」
「…何かあったのか?」
「うん。……実は、瀬戸って男の人に言い寄られてて。その人、アタシの女友達にもちょっかい出してた人なの。でね、その友達、酷い目に合されて、その……自殺、しちゃって……」
「そんな男に……稀世が……?」
「だから、あの人がいなくならない限り、安心して暮らせない。そのうち栄治さんと、こうして笑って過ごすこともできなくなっちゃうのかなぁ」
「───そんなことは、絶対にさせない……!」
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