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77. まやかしの平和4

な…、謎のシーンだ………。何が起こっている? 「葵様、風吹様にキスしてくださいませ!」 「えっ…?」 「えっ!?」 葵君と2人、顔を見合わせる。 な…なにを言ってるんだい、詩子ちゃん…?あれ?ふざけられてる??さっきまで泣いてたよね?泣いてたよね、詩子ちゃん?? 「あの…詩子さん…?なにを…」 葵君も、詩子ちゃんの奇行に理解が追い付かないようで、動きがカクカクロボットダンスみたいになってしまっている。 足元にチリンと鈴を鳴らしながらすり寄った猫を、動揺を隠せない動きで抱き上げる。 「ですから、先ほど兄が風吹様にキス致しましたの」 「えっ…」 「ちょっ、詩子ちゃん!?」 どこから!? どこから見てたの、詩子ちゃーんっ!? 「愛しい殿方から消毒と称したキスを頂かなくては、麗しい風吹様が穢れてしまいますっ!」 「……あの、風吹さん……?」 「ちっ、ちがうよ!葵君!?」 そんな…そんな目で見るなーっ!僕は無実だ!一方的にされた方だーっ!! 猫もっ!そんなところで葵君の胸にすりすりしてないで、僕はただの被害者なんだって一緒に訴えてくれ! 「だから、あれは、青山が…、だって、青山のは、海外暮らしが長いから挨拶みたいなもんだって…」 「海外…?兄はずっと日本暮らしですわ」 「えっ!?じゃあ、お父さんかお母さんが外国出身の方?」 「何処でそんな話を聞いたんだ。私の家系は代々日本人だ」 ど…、どういうことだ……? だってこいつは、海外育ちかハーフだから、スキンシップが激しいんだって………僕…… ───勝手に思いこんでたぁ…っ!? なんだよ、じゃあ彫りが深いのも、なんだかお洒落なのも、外国なんか関係なくて、ただこいつが勝手に…… 「もーっ!どうして早くそう言わないんだよ!」 「どうしてと言われても……、我々は君がそのように思っていたことも…」 「存じ上げませんでしたわ」 なんだよ、じゃあ僕はただ単に……本当にただこいつを甘やかしてただけに過ぎないじゃないか───!! 「なにが挨拶代りだよっ!もうお前、僕にちゅうとかしてくんな。ほっぺもダメだぞ。わかったか!」 「何をツレナイことを言っている」 「ツレナイじゃない!雪光は僕から離れる!詩子ちゃんはそこに大人しく座っていなさい。葵君、いらっしゃい!僕は飲み物を用意してくる!葵君、コーヒーと紅茶はどっちがいい!?」 「あの…、それでは、コーヒーでお願いします」 「了解!青山兄妹はそこでちゃんと大人しくしていなさい!」

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