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83. 竹取物語1

戻ってきたのは、探偵だけだった。 葵君は仕事に戻ったのだろう。先ほどの訪問も仕事の一貫だったのかもしれない。 探偵は「アイスコーヒー」と僕に指示を出すと、ソファーにどかりと腰を下ろした。 ……出かける前の、ちゅうちゅう甘えてきたあの男は一体何処へ行ったんだ。 また僕のことを小間使い扱いか。僕はここで「よろこんで!」とかってジョッキでアイスコーヒーを持ってってやるのが正解なんだろうか。 「後でメール一本で済ませるつもりだったが、……まったく、執事殿は運がいい」 しかもまた高虎に嫌味言って。 詩子ちゃんはボロボロになった髪や服を春子さんに整えてもらっている。  * * * * * 何がどうなったのか、葵君が探偵に持ってきた結末の話は、聞こえなかった。 覗いていたわけじゃない。扉を開けようとしたら葵君が謝る声が聞こえて、そっと見たら深々と頭を下げていた。 探偵が僕を置いて出かけて行った。 すべては終わった───そう言うことなんだろう。 僕が理解したのは、それだけだ。

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