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90. 第二章-最終話-1
「これで、もう風吹様が危険に遭われることもなくなった、と言うことですわね」
詩子ちゃんが、ホッとした様子で息を付いた。
「これからは安心して外出できますわ。よろしかったですね、風吹様」
それに対して探偵が、「この馬鹿者め」と一喝する。
「一条君は危機感がなく迂闊な行動に出ることが多い。この男の周りに安全な場所など、このビル内の他何処に存在すると言うのだ」
待て、僕はそんなに迂闊じゃないぞ!───と否定したいのはやまやまだったが、罵詈雑言で心を折られることは火を見るより明らかで…。
悔しい気持ちと共に、僕はグッと言葉を飲み込んだ。
「これからも風吹は、私と別行動の外出は避けるよう」
「えっ、冗談…」
「………」
「…じゃ、なさそうだな……」
目が……こわい………。
確かに今回はちょっと迂闊だったかもしれない。
けど、僕だって立派に成人してる男だぞ。1人で外出禁止とか、有り得ないだろう。
「雪光は、ちょっと過保護だと思う。って言うか、僕の方が3つも年上なんだからな」
だからもっと敬って欲しい、という願い入れは素早い返しによって口にすらさせてもらえない。
「だったらもっと年上らしく振舞い給え。年下の膝にちょこんと乗って」
「ちょこんとか言うなっ!つーか、お前が勝手に乗せたんだろうが!」
「ならばせめて、これを付けていろ」
雪光が、ポケットから何かを取り出した。手の中で、何かがしゃらりと音を立てる。
ダイヤと思われる、大きめの石。
これって、何カラットあるんだろう?怪盗が盗みに来るほどではないけれど、…1cmはあるかな。大きいよな、これ。
でも、ダイヤ石に、華奢な鎖に。
これって、どう見ても………
「探偵殿、それは女性ものでは?」
───だよな!女性ものだよね、高虎!?
女性もののネックレスなんて、男の俺がつけられるかーっ!!
「ゆきみ───」
「兄様っ!?それは董子 お姉様への贈り物ではありませんの…!?」
文句を言おうと口を開いた瞬間、それは詩子ちゃんの言葉に掻き消された。
「え……?」
とうこ…さん……?
誰だろう。はじめて聞く名前だ。
「詩子」
探偵が、険しい顔をする。
「初めに伝えたはずだ。お前からの質問は受けないと」
「ですが兄様、これは、事件とはなんら関係のないお話のはず。それならば私の質問も…」
「お前の質問に応じなくてはならない義務が?」
「否定なさらないと言うことは、肯定と捉えて宜しいのですね」
「……勝手にすればいい」
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