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3.消えてあげる2

「私は…君に嫌われたかと…」 「嫌いだって、言ってるだろ」 「……無理矢理、押さえつけて…あんな真似を……」 「別に、テメェにやられんのはヤじゃないって…言っただろーがっ」 「だって、…泣いて……」 「誰だって泣くわ!他のやつの代わりにされてんだぞ!代理で襲われるとか、無いだろそーゆーのっ!」 毛布を投げつけながら怒鳴ってやると、雪光は掌で顔を押さえて、深く息を吐いた。 「よかった…。傷つけたかと思った……」 …こいつは……っ。人の話を聞いてないのか〜〜っ!! 「傷付いたっつってんだろーが!」 「すまなかった」 それが人に謝る態度か!なにニヤニヤ笑ってやがる!! 「大体おまえ、男だったら浮気にならないとか思ってるんじゃないだろうな。婚約者の人、余計傷つくぞ」 「傷…つく…だろうか……」 「俺だったら、カノジョが女の子と浮気してたらびっくりする。で、泣く」 「…君ならば、相手が男だろうと泣くだろう?」 「泣くよ!うるせーな」 浮気されたら傷つくと言っているのにこの男は……っ。 指先で僕の髪を弄んで、頬を擽る。 妙に淋しい顔をするものだから、払いのけることも出来ない。 「それに、いつかはそっちに帰るんだろ。婚約者の人のとこに。それまでの繋ぎに俺を使ってるってんなら、やっぱり俺は───」 「帰るんだろうか……」 頬を撫でるように掌が覆って、じっと瞳をのぞき込まれた。 「…知らねえよ……。テメエのことだろが……」 「本当は、追うつもりでいたのだよ」 なんのことだろう…? 僕を見つめているはずの目は、僕を通り越してどこか遠くを見ているように感じる。 ───やっぱり僕のことなんて、見ていないんじゃないか、おまえは。

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