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4.消えてあげる3

ばからしい。そんなおまえのために、必死になって。 避けられてるぐらいで、怒ったりして。 避けられているなら、関わらなければいいんだ。 そうすれば、そこでおしまい。 もう、振り回されることも、傷付けられることもなくなる。 もし、おまえが少しでも未練があるというなら、僕がおまえを捨ててやろう。───なんて。 まるで本当に浮気されてたみたいだな。笑える。 いや、反対か。もし関係が有ったとしても、こっちが遊びの浮気相手で、あっちが本命の婚約者だ。 「雪光…、僕、伊吹のとこに行くよ」 「っ…風吹……!?それは、どういう……」 雪光、やっと僕の方を見たな。 「伊吹に誘われてるんだ。マンションを買うから一緒に暮らそうって。ここは、通いで管理人を雇えば、問題ないだろう」 「だって、君は、私の……っ」 「ご飯が必要なら、雇用条件に付け加えとく。それに、詩子ちゃんだって作れるし、兄妹なら2人で協力して暮らしていけるだろう? 詩子ちゃんには、嘘を付くことになっちゃうけど」 僕が居なくなったら、またあんな風に泣き乱れるのかな…? でもまた、春子さんが来てくれれば大丈夫…だよね。 春子さんには、迷惑をかけてしまうことになるけれど。 ……おまえもそんな風に、捨てられそうになってる犬みたいな顔するんじゃないよ。 泣いちゃいそうになるだろ…? 「だからおまえは、ちゃんと僕離れして、婚約者のところに帰りなさい。女性の代わりになんてされたら、流石に温厚な僕でも不愉快…だからさ」 「代わりなんかじゃ…」 「代わりじゃなかったら、じゃあ、なんだよ?」 できるだけ優しく、できるだけ穏やかに……。 そうしておまえは静かに考えて、用意された答えに辿り着けばいい。 僕はちゃんと、おまえの前から消えてあげる。 雪光の手から、力が抜けた。 僕の頬から外れた掌が、額にかかった黒い前髪を、ぞんざいに掻き上げた。 眉間に皺が寄っていた。 「あぁ…、面倒臭い…」 聞き間違いだ、と…思いたかった……。 「ああ、面倒だ。もうどうでもいい」 雪光が気怠げに立ち上がる。枕元からサイドへ回り込むと、乱暴にベッドへ乗り上げた。 驚いて避けようとすると、荒々しくベッドに投げ出され、両腕を押さえつけられた。 「もう考えるのは止めだ。私には君さえいればそれでいい」 まるで、告白のようだと思った。それから直ぐに、危機を感知した。 「ゆき───っ!?」 気付いたときにはもう遅かったけれど。

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