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10.会いたい1
「一条君、早くし給え。温泉に入る用意ぐらいでいつまで掛かっているのだ。君は女性だったのか?」
「うるせーな、ちょっとくらい待てねーのか。なにウキウキしてんだよ。てめーこそガキかっつーの」
なんだこいつは…。さっきと同じ人間なのか?
僕は時々お前が、気づかない間に双子と入れ替わってるんじゃないかと思うよ、雪光。
「また、なんて言葉遣いを…。君は私を甘やかすために生まれてきたのだろう?少しは私に合わせ給え」
「ばか!人の言葉を曲解すんな!」
「何を怒っている。君は私に出逢うために生まれてきたのだから、結局は同じことだろう」
「僕の受け止めようが違うよっ!」
それに、お前に出逢うために生まれてきた、ってなんだよ…。中二病か、おまえは。
お墓参りの後、僕たちは雪光が学生時代何度か訪れたことがあると言う旅館へとやってきた。
流石、お坊ちゃま。普通の学生が泊まりに来られるような所じゃない。なにやら風情のある老舗旅館だ。
部屋に露天風呂もついているが、打たせ湯があるとかで大浴場にも入りたいらしい。
探偵がこんなに温泉好きだったとは………。
正直、こんなにウキウキそわそわした奴を見るのは、初めてだ。
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