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13.会いたい4

ナナは笑いながら、僕のお腹にパンチを入れた。 それから勝手に歩いて行ってサロンのソファーに腰を下ろすから、それに倣ってソファーに座る。 「じゃあ、ナナは葵君と姉弟で旅行中?」 「あ、……いやぁ、初めはそのつもりだったんだけどさあ」 ナナは頭に手をやり、すっと目を逸らす。 「あと、男と女の友達が、1人ずつ。フブキは!? さっきの人と2人?」 ……あぁ、そうか…。 彷徨う視線に、焦ったような声。それを落ち着かせようと、誤魔化そうと、投げかけられた質問。 探偵と葵君は、いつの間にか傍にいない。 ───そして僕は、気づいてしまった。 「僕はさっきの奴と2人だよ。あいつは、青山って探偵」 「あっ、青山探偵ね、葵君から聞いてる。フブキ、そこのビルの管理人なんだってね」 「そう。あいつと一緒にいるうちに、僕も幾らか鋭くなったみたいで…」 「フブキも捜査とか手伝ってんの?」 「いや、僕は民間人なんだから事件には関わるなって、口酸っぱく言われてるよ」 それでも、…ナナ。 僕は君の隠していることに、気づいてしまったんだ。 「実はさ、葵君と青山は仲が良くないんだ。2人が僕に隠れてコソコソ何かをする時ってのは、十中八九僕の為」 「えっ、そ、そうなの?いやー、なんかその言い方、怪しいなぁ。葵君のことそっちの道に引き込まないでよー?」 「そっちの道って、どんな道だよ」 動揺し過ぎだよ、ナナ。 それじゃあ、逆に勘ぐってくださいって言ってるようなもんだ。 「ナナの連れは、チヒロと、誰?僕の知ってる奴かな」 「っ!?………」 ナナは一瞬目を見開いて、僕の顔をじっと見つめた。 そして、顔を掌で覆うと、深く息を吐きだした。 「アンタ、もっと鈍くなかったっけ…」 「だから言っただろう。青山と一緒にいるうちに、幾らか鋭くなったんだよ」 「…アタシは、チヒロを傷つけたくないんだよ」 「うん……」 「それでもアンタは、チヒロに会うの?」 ナナの強い視線が突き刺さる。 「僕は………────会いたい」

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