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26.ケリつけて来い2

見上げた先で、雪光が開きかけた口を噤む。 酷く厳しい視線を受けて、黒羽は小さく息を吐いた。 「……雪。いい加減、会ってやれ。このままじゃあ、透也が可哀想だ」 また、だ。 黒羽が、雪光を「雪」と呼んだ。 「アンタには姫君がいる」 多分2人は、ただの探偵と情報屋という間柄なわけじゃないんだ。 「もう、透也を許してやれ」 雪光の体が、小さく震えた。 抱きしめる腕に、恐らく意図せずに、力が籠もる。 「───会うつもりはない」 低い音が、無理矢理空気と共に吐き出されたような、雪光の言葉。 2人の会話に入って行けずに、今にも震えだしそうなその体をぎゅっと抱きしめる事しか出来ない。 僅か数分前には僕の方が動揺していたのに。雪光に抱き締められて、どうにか落ち着いたっていうのに……。 慰め合い? これじゃあ、同類相哀れんでるとか、相手に依存してるって言われても、否定出来ない。 「ねえ、姫君……フブキさん、聞いてくれる?」 黒羽の声が、滲んで聞こえた。 真面目な声、出しやがって……。 聞かないわけに、いかないだろ。それが雪光のことなら、尚の事。 「聞くよ」 震える唇をぎゅっと結んで、しがみついてくるその体を少し押して離した。 「でも、初めに聞かせて。……黒羽、君は雪光の、何?」 「ん……、オレは、雪の幼馴染で、親友…かな?」 首を少し傾げて、黒羽は視線を落とした。 「…なあ、雪…?俺はまだ、アンタの友達?それとも、ただの便利な情報屋?」 「……馬鹿な事を聞く」 振り向かないで、雪光は答える。 けれど黒羽は親友の意図を理解したらしくて、顔を俯けたまま、薄く笑った。 「じゃあ、そういう態度、とってよ」 素直じゃないこの男と長年付き合うってのは、こう言う苦労や心労やらを強いられるってことなんだろう。 人事じゃないな、と。それでも何処か他人事のように思う。 「それからね、フブキさん。透也はおれよりもっと特別で」 黒羽が顔を上げ、僕の瞳に焦点を合わせた。 「透也は、俺たちの親友で、……董子さんの弟なんだ」 「……っ」 雪光が、ピクリと反応した。 「そして、あの夜───董子さんの亡くなった夜に、雪と一緒にいた」 あの夜───そうだ、確か雪光は、董子さんから電話のあった時、友人と共にいて着信に気付かなかった、と言っていた。 その時一緒にいた友人が、董子さんの弟だった。 董子さんが亡くなった一件以来、その透也君とは会っていないってことか? 許してやれ。 と、黒羽は言った。 雪光は、彼女が亡くなったことを、その弟の所為だと………

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