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27.ケリつけて来い3
「───馬鹿だな、君は」
自分よりも高いところにある頭を抱き寄せて、その顔を肩に押し付けた。
この男が、それを他人の所為にして恨むような可愛い質 か。
雪光も、黒羽も、自分自身でいっぱいいっぱい、互いのことが見えていなさ過ぎだ。
「しょうがない…ガキ共だな」
黒羽を呼び寄せて、その頭もくしゃくしゃに撫でてやる。
初めて見る表情。
黒羽は少しだけ泣きそうな顔になって、僕から目を逸らした。
「雪光は、言葉が足りないんだよ。前にも言っただろう。ちゃんと言葉にしなくちゃ人には分からないんだって。
自分1人、心の内で完結させるな。
透也君のこと、恨んでなんかいないんだろう?
だって雪光はそれを、透也君の所為だなんて思っていないんだから」
雪光に掛けた問いに、黒羽が反応して顔を上げる。
「じゃあ、君が彼に会わないのはどうしてだ?彼に会うと、……どうしても思い出してしまうから?」
黒羽とは逆に、雪光はスッと目を逸らしてしまう。
図星…ってこと、なんだろうな。
「………僕にばっかり文句言って、自分の方が董子さんのこと、忘れてないんじゃないか。董子さんの元に戻れないからって、僕を構うんだろ」
「っ───それは違う!」
「じゃあ、会えない理由なんて無いだろ。お互いに自分を責めて、それでお前の貴重な友達失うとか、馬鹿みたいじゃん。
それにハッキリ言っておくけどな、お前が俺に言ったこと、てめぇで否定してりゃー世話ねえんじゃねーの。てめぇじゃちっとも思ってもねーことテキトーに言い散らかして、俺の罪を誤魔化したわけじゃねーんだろ?」
「ふぶ…き……?」
「それともてめぇの董子さんは、お前が迎えに来なかったから殺されたんだって恨むような女だったのかよ?
一緒にいて電話に気付かせなかったって、弟恨むような姉ちゃんだったのか?」
「そんな…ことは……」
「じゃあ、てめぇが悪ぃんじゃねーだろーが!悪ぃのは、車を運転してた奴、乗ってた奴。雪光でも、透也君でもねえ。
分かったらさっさとケリつけて来い!それが済むまで、俺に指一本触れんじゃねーぞ」
胸元をドンと押して、斜に睨みあげた。
よろめいた背中を、黒羽が手を添えて支える。
目を細めて安堵の息を吐いた黒羽の、その瞳に視線をずらす。
「…お前、僕を利用したな」
雪光の口から、チヒロのことは僕の所為ではないのだと言わせて、僕の口からもまた、悪いのは犯人だと……
その為に、チヒロの話を持ってきたんだ。
「ごめんね、姫君…」
項垂れたその姿が、少しだけ可笑しい。
「ごめんじゃないよ…」
ぼやくように言うと、頭が更に深く下げられる。
「……僕だって、雪光のことは大切なんだから。今度は利用じゃなくて、ちゃんと相談しろよ」
「っ───姫~っ!!」
抱きしめようと伸ばされた手が、直後遠ざかっていった。
雪光の掌が、黒羽の腹を捉え、壁へと吹き飛ばしていた。
なんだなんだ、お前ら格闘マンガのキャラクターか。
楽しそうなのはいいけど、壁壊すなよ。
てか、人が吹き飛ばされるとこなんて、初めて見たな。
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