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28.ケリつけて来い4

アイタタ…と、大したダメージ無く立ち上がる黒羽の姿に、一つの疑問が芽生える。 「なあ、黒羽。チヒロのこと、どうやって調べたんだ?」 事実はともかく真実は、当事者から以外漏れようもないことなのではないか。 (あるい)はクモジならば、酔って他人にペラペラと話すこともあるのかもしれないけれど。 「あ、タケさんから聞いたよ」 「……は!?」 何でもないことのように発された言葉に、耳を疑う。 「当時、チヒロさんがカレンさんにだけ話して、1人で抱えきれなかったカレンさんがタケさんに相談した」 「えっ、いやっ……タケ!? なんで、黒羽とタケ!?」 「葵ちゃん経由で紹介してもらって、オレとタケさん、メル友で飲み友。フブキさんとも友達って言ってあるよん」 「え!? ともだち…って、葵君!?」 「葵ちゃんとはね、真剣交際…」 「はぁっ!?」 「狙って、絶賛アタック中」 「アタック…!?」 「だから、姫様もオレのこと、応援してね」 「応援って………」 あぁ…、もうわけが分からな過ぎて、力が抜ける。 床にしゃがみ込むと、引き起こそうと手を伸ばした雪光が、目が合うなり気まずそうに手を引っこめた。 ……そうだった。指一本触れるなって言ったんだった。 別に、手ぐらいなら気にせず貸せよ。雪光の馬鹿正直。 椅子に手を掛けて、立ち上がる。 「じゃあ、先に帰ってるから。黒羽、雪光をよろしく」 「はい、よろしくされます」 不機嫌な顔の雪光とは対照的に、晴れやかな笑顔の黒羽が軽やかに敬礼する。 そして僕は一人、事務所を後にした。 扉が閉まるのを見届けて、探偵が口を開いた。 「(あきら)……、頭と心とは、異なるものなのだろうか…?」 「…いや。心とは大脳皮質の反応によるもの。結局は、頭の問題なんだよ、雪」 「……そう…だったな」 そして探偵は、何を感傷的になっているのやら、と呟き、薄く笑った。

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