189 / 211
28.ケリつけて来い4
アイタタ…と、大したダメージ無く立ち上がる黒羽の姿に、一つの疑問が芽生える。
「なあ、黒羽。チヒロのこと、どうやって調べたんだ?」
事実はともかく真実は、当事者から以外漏れようもないことなのではないか。
或 はクモジならば、酔って他人にペラペラと話すこともあるのかもしれないけれど。
「あ、タケさんから聞いたよ」
「……は!?」
何でもないことのように発された言葉に、耳を疑う。
「当時、チヒロさんがカレンさんにだけ話して、1人で抱えきれなかったカレンさんがタケさんに相談した」
「えっ、いやっ……タケ!? なんで、黒羽とタケ!?」
「葵ちゃん経由で紹介してもらって、オレとタケさん、メル友で飲み友。フブキさんとも友達って言ってあるよん」
「え!? ともだち…って、葵君!?」
「葵ちゃんとはね、真剣交際…」
「はぁっ!?」
「狙って、絶賛アタック中」
「アタック…!?」
「だから、姫様もオレのこと、応援してね」
「応援って………」
あぁ…、もうわけが分からな過ぎて、力が抜ける。
床にしゃがみ込むと、引き起こそうと手を伸ばした雪光が、目が合うなり気まずそうに手を引っこめた。
……そうだった。指一本触れるなって言ったんだった。
別に、手ぐらいなら気にせず貸せよ。雪光の馬鹿正直。
椅子に手を掛けて、立ち上がる。
「じゃあ、先に帰ってるから。黒羽、雪光をよろしく」
「はい、よろしくされます」
不機嫌な顔の雪光とは対照的に、晴れやかな笑顔の黒羽が軽やかに敬礼する。
そして僕は一人、事務所を後にした。
扉が閉まるのを見届けて、探偵が口を開いた。
「昶 ……、頭と心とは、異なるものなのだろうか…?」
「…いや。心とは大脳皮質の反応によるもの。結局は、頭の問題なんだよ、雪」
「……そう…だったな」
そして探偵は、何を感傷的になっているのやら、と呟き、薄く笑った。
ともだちにシェアしよう!