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29. 閑話1
部屋に戻って、旅行の荷物を取り出す。
乾燥機に掛けられるものは今洗濯して、ベッドから外したシーツと、持って行ったシーツは、明日回そう。
旅行用キャリーから取り出した洗濯物を、取り敢えず洗濯カゴに入れた。
それにしても───
身を起こし、重い腰をトントンと叩いてみる。
確かに、旅館の布団を汚したらいけないと上に掛けるようにシーツや、更に沁み込み防止にバスタオルを持って行った訳だけど……
だからって、どんどん汚して下さい!ってコトでもないのに、あの絶倫ヤロー……。
普段運動してるところなんて見せたことない癖に、何処にその体力隠し持ってやがった!
もう一度 軽く腰を叩いて、キッチンに移動する。
夕飯は、買ってきたおかずがあるし、残ってる野菜でサラダも作れるだろう。
米だけ研いでおけばいいかな。
米を研ぎ終えて、お風呂の掃除も終わった頃、雪光からメールが入った。
『すぐに帰る』
と一言。
「…早いっつーの」
思わずプッと吹き出してしまう。
久々に会えた友達なんだろ?
再会して、漸く互いの誤解やわだかまりが解けたんだろ?
一緒に飲もうとかって話にならないのかよ。
「おーおー、そんなに風吹さんと離れてたくないかねぇ」
自分の独り言にも笑えてくる。
なんだコレは。なんでこんなに幸せなんだ?
さっきまで、チヒロを思って泣いてたくせに。薄情な男だ。
こんな男と、早々に別れて正解だったね……。
どうか、優しい人と一緒になって、今度こそ
───幸せになってね、チヒロ。
垂れかけた鼻水をティッシュで拭って、ゴミ箱に放り投げる。
こんなの、雪光に見られていたらゲンコツものだ。
ちゃんとインしたのを確認してから、冷蔵庫から取り出した缶コーヒーに口を付けた。
雪光は、熱いコーヒーの方がいいかな?
ご飯、まだ当分炊けないから、お風呂にお湯を溜めておくか。
なんとなくつけたテレビを観ながら、そうか、まだ昨日の今日だったんだ、と思い当たる。
董子さんのお墓に行ったり、葵君たち──チヒロに出会って泣いて。
夜には散々…訳が分からなくなるほどにトロトロに溶かされて……。
お風呂に一緒に入ったのも初めてだったし、高級車に乗って雪光の運転で旅行とか、……キス、してるとこ見られちゃったし。
黒羽はいきなり色んな暴露かまして、僕、また泣いちゃったし……。
一気に色々起こり過ぎて、頭が考えることを拒否しているのかもしれない。
あの我儘探偵の為に色々やってやる事が、しあわせだなぁって、無意識に思っているだとか……、絶対におかしいもんな。
明日は雨かぁ…。シーツ干せないじゃん。
旅行、昨日今日で良かったな。
いい天気だったもんな……。
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