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36.更科家の真実

春子さんと高虎が兄弟で、更に春子さんのお母さんと高虎の育ての父親が2人の両親───!? 思いだにしなかった事実に驚愕する。 勘の良い2人ですら、百合子夫人と中川執事の関係には思考が追い付いていないようだった。 「元々中川恭敬氏は百合子夫人の専属執事でした。丁度、貴方方と同じようにね。ですがお二人と異なるのは、彼らは互いに愛しあっていた、という事実」 本当にあるんだな…、お嬢様と執事のラブロマンス。 そんなことを考えて高虎と春子さんを見るけれど、……そう、2人は兄と妹。言われてみれば、雰囲気も似ているような気がする。 高虎のことを品があると評した僕の見立ても間違ってはいなかったと言うことか。 「しかし菫夫人は兎も角、それを芙由子夫人が許す筈もなかった。 そして年頃になった百合子嬢は、やけっぱちで婚姻相手を選ぶことになる。その相手が、重行氏だったのです」 「だがっ、それが父の子ではない理由にはっ!」 誠一氏は、まだ何かに縋りたいのだろう。 父親を擁護して、更科家の血を引く者の親として立場を残させようと懸命に訴えかける。 けれど探偵はそれを一瞥すると、 「理由───いえ、一目瞭然な証拠ならこちらにありますよ」 テーブルの上に、数枚の紙を散らした。 それには『DNA鑑定報告書』の見出しがあった。 99.99999997%一致 0.0000000%一致 99.9999995%一致 0.0000000%一致 「説明が必要ですか?重行氏との親子鑑定、上から誠一さん、春子さん、桜子さん、おまけに執事殿───いえ、更科家の正当な嫡子、更科高虎殿」 更に被せるように置かれた2枚の紙。 99.99999996%一致 99.99999997%一致 「そちらは、中川恭敬氏とジェニュインお2人の親子鑑定の報告書です」 黙り込む─── 春子さんも、高虎も、更科重行の子供たちも、みんな言葉も発せずに、黙り込む。 「───あんな男にただの一度も許したことは無い」 ただ一人、場の空気に飲まれない男を見上げる。 「菅原由美に面会して、話を聞いて来ました」 菅原由美……。 半年前の、令嬢連続殺人事件の犯人にして、春子さんの命を狙っていた、更科家の元使用人。 今は裁判を待ち、拘置所に入っているらしい、けれど…… 「病床での、百合子夫人の言葉です。 死に掛けた生の縁で、第三者に聞かせたかったのでしょう。愛した男はたった一人、中川恭敬だけだったと。 そしてその相手に…、春子さん、貴女の世話を専属でしていた、菅原由美を選んだ」 「由美さん……」 春子さんが、震える声で呟いた。 高虎が背後に回り、その肩を支える。 「お分かりになりましたか?」 青山が、立ち上がった。 「誠一氏。貴方は───イミテーションなのです」

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