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22.天然人タラシ2

2人に断りを入れて、寝室に戻った。 探偵の持たせてくれた着替えは、Tシャツにベストにチェック柄のチノパンに、…下着までありやがる。 そりゃあ、無いと困るけど…なんだか複雑な気分だ。 下着の引き出し、勝手に開けられた……。 それに、ベストなんてずっと着てなくて、結構奥にしまい込んでたやつだよな…。 奥の奥まで漁りやがって、まったく。 それにしてもあいつ、ほんとはこういうコーデが好きなのかな? 自分にはあんまり似合わないからって着ないのかな。 ……まあ、確かに似合わなそうだけど。 服を着て寝室を出ると、2人はソファーに向かい合わせに座っていた。 何か飲み物を、と思ったけれど、手招きされて探偵の隣に座る。 探偵の妹と思われるその女性は、こちらに気づくと怒りをむき出しにしていた顔を気まずそうにそっと背けた。 探偵の方はまったく動じていないようで、いつもの調子でソファーにふんぞり返って足を組んでいる。 「ああ、一条君、これは妹の詩子(うたこ)だ。詩子、こちらは奴隷の一条君だ」 「詩子です」 詩子ちゃんは控えめな声を出し、頭を下げた。 「管理人の!一条風吹です」 奴隷を否定するよう声を荒立てると、憐れみを込めた目で見返された。同士、なのだろう。 「よろしくね、詩子ちゃん」 笑顔を向けると、目を逸らされた。 そんなに不審な表情になってしまっただろうか。顔をペタペタと触っていると、隣で探偵がくつくつ笑う。 「なんだよ…?」 シャツを引っ張ると、更に目を細める。 「いや。君は可愛いね」 「っ…可愛くねーよ」 3歳も年上のアラサー男に可愛いと伝えて、一体どんな反応が見たいんだよお前は。 「そんなことより、詩子ちゃんは青山に用があって来たんだよね。邪魔だったら僕…」 「いや、構わないからここにい給え」 お前には聞いてないんだよ。 思いをこめて目を見るも、探偵は理解しているのかしていないのか。 ただ、太ももに手を乗せられたから立ち上がることができない。 「お兄様、私のマンションを勝手に解約なさいましたね」 詩子ちゃんの言葉に、探偵を見上げた。 「ああ。お前は来月からここに住むと良い」 「えっ?」 聞き返したのは、僕だけじゃなかった。 兄妹で仲良く住みたい、と言うのならば、僕自身は構わないけれど。 仲良く…出来るのかな…? 正面の女の子を見る。 顔が引きつっている。 「はぁっ!?誰がテメ…お兄様と同居だなんて、冗談にも程があります!私は嫌です、絶対に!」 「私も嫌だよ。大体、誰がお前と住むなどと言った」

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