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26.君が煽らなければ2
2人の雰囲気に、合点がいった。
………そう言うことかよ。飲み物はいらないって言ったのは。
───やっぱり嫌いだ。下品な女。
「出てくりゃいいんだな」
クルリと背を向けて、階段を下った。
探偵は答えもせずに、事務所のドアを開けた。
「君が悪いのだ…」
何か聞こえたから振り返る。
けれど違う。視線がこちらを追いかけてこない。僕に話しているわけではない。
そう思って、止めてしまった足を動かそうとすると、
「昨夜、君が煽らなければ───」
パタンと音がして、もう声は聞こえなくなった。
つーか、誰が、なんだって?
昨夜なんて、ただ酔って寝ちゃってただけじゃないか。
煽ったって、もしかしてアレか?
春子さんがお前に靡かなかったからって、って言っちゃったやつ?
あれで喧嘩を売ったと思われた?
探偵ももういい大人なんだから、そんなことを言われたぐらいで、俺は一声かければ有名人の1人や2人簡単に呼び出せるんだぞ的なこと、見せつけるために本当に女の人呼ばなくても…!
お前がモテるのぐらい知ってるよ。
僕が悪いのか?
だって、あれは訳が分からなくて、なんだかムカっときて。
僕1人が悪い訳じゃないじゃんか!!
頭にきたから、壁を一発蹴り上げた。
当然、人体がコンクリートの強度に勝てるわけもなく、直後僕は声も出せずに床に蹲ることになった。
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