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33.姉と妹1

店を見やると、ちょうど春子さんが店員に見送られて門を出てくるところだった。 後ろにもう1人女性がいる。 春子さんとは似ていないけれど…、あれが妹の更科桜子だろうか。 「春子さーん!」 大きく手を振る。 「一条様」 少し驚いたようだったけれど、笑顔で小さく手を振り返してくれた。 「お迎えに上がりました、お嬢様」 高虎みたいに礼をする。 「ええ、ありがとうございます」 差し出した手に、春子さんの手が重なった。ドキンと心臓が跳ね上がる。 この後、どうしたらいいんだろう。 取りあえず車まで歩いて、ドアを開けて…。 あ、ドア、高虎が開けてくれてる。あそこまでエスコートすればいいってことだよね。 じゃあ、何か気の利いた話でもしながら車に…。 「あのっ、いいお天気ですね」 「はい、気持ちのいいお天気ですね」 あぁっ、天気なんて、話題に困った人がとりあえず振る話の代表格じゃないか! ワタワタとしていると、春子さんが顔を覗き込んでくる。 太陽の下の貴女も光に彩られて綺麗です……って、何を考えてるんだ僕はっ! 「あらお姉さま、そちらの殿方は?」 外見で想像するより、低い声だった。 赤いスーツは胸元が大きく開いて、目のやり場に困った。巨乳とか爆乳ってやつなのだろう。 探偵は好きそうだよな…。 「妹の桜子です」 紹介されても会釈するでもなく、桜子は挑発的な目をこちらへ向ける。 「こちらは青山のビルのオーナー、一条様です」 「一条です」 頭を下げる。頭上で、フッと笑い声が漏れた。 「随分とお若いオーナーさんですこと」 はいはい、言われ過ぎてもう慣れました。 「一条さん、ビルはおいくつお持ちですの?」 「…1棟ですが」 「あらぁ、ビル1棟でオーナーだなんて。お姉様にピッタリな殿方でなくて?」 そりゃあ、更科製薬のお嬢様が聞いたら、ビルたった1つ、だろうけどな。 それよりもこの人、お姉さんに向かって失礼じゃないか? 「───桜子!」 手を引き進もうとした瞬間、春子さんが声を張り上げた。 「私のことならばなんと言われようが構いません。ですが貴女は、一条様になんて失礼なことを…!」 春子さん…、僕の為に怒ってくれてる? 怒りを露わにした顔も、なんて綺麗なんだろう─── っ、じゃなくて! 「はる…」 「春子様、お車へどうぞ」 手がぐいっと引かれ、腕が突っ張った。 僕と手をつないだ春子さんを、高虎が車へ誘導していた。足を止めたままだったから、手が離れる。 「風吹も早くおいで」 小さく声がかけられる。

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