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35.姉と妹3

遠くなっていく背中を黙って見つめる。 曲がり角を曲がって、探偵の姿が見えなくなって、───急に力が抜けた。 ペタンと地面にへたり込む。 一気に怒りが爆発して、疲れたぁ……。 「…お腹、減った」 声に呼応するように、お腹がくぅ~と音を出す。 「あ……、猫にあさごはんあげてない…」 外側の猫も、戻って来たみたいだ。 上品ぶって「僕」とか言って、慣れない自分に疲れているつもりだったけれど、半年も経って「僕」の方も自分になっていた、と言うことか。 お昼ごはん、どうしようかな。お金持って出てこなかった。 ペコペコのお腹を庇うように、膝を抱えて座り直す。 家には、戻りたくないし…、やっぱり実家に帰って……。でも猫の餌、探偵のやつ、きっと忘れる。 「風吹ちゃんは、雪ちゃんが嫌いなのかい?」 思いがけない質問に、いつの間にか傍に来ていた正さんの顔を見た。 「え、…なんで?」 「雪ちゃんのこと、もうごめんだ、って言ってたじゃない」 「え?そんなこと、僕…?」 確かに、探偵に散々文句は言い放ったとは思うけど、もうごめんだなんて、そこまでは………あっ! あれか?上品ぶった青山の街なんてごめんなんだよって言葉が、曲解された!? 「えっ、嘘!そう取れた!?」 「そうじゃないのかい?」 「そうじゃないよっ!確かにあいつは我儘で自分勝手で頭来るけどっ、嫌いだったらはじめっから面倒なんて見てやらないよ!」 「だったら、追っかけてやんないと。雪ちゃん傷つきやすい子だから」 「えっ、そうなの!?もーっ、めんどくさいやつ!!」 探偵、どっちに行った?ここ何処だ?どっちに行けば家に着ける? 「風吹さん、右です!」 曲がり角、左へ行こうとすると葵君の声が響いた。 「ありがとー!」 慌てて逆へ進むと、大通りへ出た。 ここまでくれば道に迷うこともない。

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