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37.らしくない2

普段より覇気がない。 何処かおどおどしているように見える。 探偵らしくない。気持ち悪い。 って、らしくない、はお互い様か。 「気持ち悪くて入れない」 「怒りすぎて具合でも…」 「訳の分からない女とお前が…そう言うことした場所なんて、気持ち悪くて入れないって言ってんだよ」 とっとと悟れよ! 思いを込めて睨み付けた先で、探偵は顎に手を当てて、口許を緩ませた。 「一条君…、妬いているのかい?」 「妬いてねーよ!なに嬉しそうな顔してんだよ!」 っとに、とんでもねー奴だ。勘違いも甚だしい。 「恋人でもない女連れ込むなっつってんだよ!僕の倫理に反する!」 「なんだ、つまらん」 腕を組んでソファーに腰を下ろす。 どうやらいつもの調子が戻ってきたようだ。 「兎に角!即行クリーニング呼んで、痕跡を全部消すからな!!」 指を突きつけると、探偵はフッと息を漏らすように笑った。 「それなら安心し給え。あの女ならば追い出した」 「はっ!?呼び出しておいて?」 「だってあの女、君と私は釣り合わないから付き合いを考えた方がいい等と言うのだよ」 「だってって、お前…」 探偵は拗ねたように、そう訴えてくるけれど…。 探偵と僕が釣り合わないなんて、見た10人が10人共覚える感想じゃないだろうか。 片や長身の美形、良いとこ育ちのお坊ちゃん。片や童顔低身長、下町育ちの高卒だ。 思ったところで口にするかしないか、それだけの違いだろう。 「君の所為で仕事相手を1人反古にした」 「また僕の所為?」 「なのに、妙にスッキリした。だと言うのに君は何処にもいなくなってしまって、漸く見つけた君を暴漢から護ったと言うのに…」 いや、ホントなんでお前が拗ねてんだよ。 怒ってんのも落ちてんのもこっちだって言うの。 でも、こいつがこんなだと…ホント調子狂う……。 「あーっもう!分かったよ!怒鳴ってごめん。何処にも行かないから安心しろ」 なんで僕が謝ってるんだ。 こいつの方がよっぽど酷いことをしているのに。 こいつは一度も僕に謝ったことなんか無いのに。 僕の言葉を曲解して嫌われたって誤解してるだけのくせに。 ……だけど、探偵のそれは─── 「お前、好きな子は虐めるタイプだろ」 「何を世迷い事を」 「小学生みてー」 イシシ、と笑うと目を逸らされた。それが答えだ。 「好きなら好きと言いなさい。お兄さんが可愛がってやるから」 探偵はそっぽを向いたまま応えない。 「言われなきゃ、何考えてんのか分かんないんだからな」 「………」 もう、強情だなぁ。 「例えば、僕は都立の工業高校卒なんだけどさ、これは知らなかっただろー」 「君が工業…?似つかわしくない」 話したことのない情報に、探偵が食いついた。 「あ、今工業馬鹿にしただろ。…てーか、元々勉強嫌いで、就職に有利だって聞いたから工業入ったんだけどさ。親も高校ぐらい入っとけって煩ぇしさ」

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