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43.更科邸1
探偵が情報として持っていた高虎のスマートフォンの番号に連絡した。
探偵が、とは言えずに、家にお邪魔する約束だけを取り付けた。
知らないナンバーが僕からの電話だと分かった瞬間、機械を通した低い声が、少し柔らかくなった。
けれどおそらく高虎は気付いている。これが、僕を通した探偵からの連絡だってことに。
そして高虎は、僕たちを屋敷に招き入れた。
「風吹、春子様はこちらに」
木製の白い重厚な扉が開く。
テラスルーム、と言うのだろうか。
一面が、天井までもがガラス張りの明るい部屋は、観葉植物に囲まれていた。
ガラスの外には一本の大きな桜の木が、満開の花びらをはらはらと散らしている。
真ん中にガーデンテーブルがひとつ。
そこでは3人の女性が卓上に本を並べて談笑していた。
散る桜の花びらに、美しい3人の女性。まるで絵画のようだ。
詩集や花の写真集が似合いそうだ。
5~60代の女性が紅茶を注いでいる。纏め髪は一糸乱れず、清楚なナチュラルメイクに薄く紅を引いて。
顔色は余り良くは見えないけれど、小奇麗な人だなと感じた。
それにしても、いるところには本当にいるものなんだ。リアルなメイドさん。
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