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44.更科邸2

「さて、どうするか」 探偵がぽつりと呟いた。 どうするか。犯人を挙げておしまい、ではいけないのだろうか。 「春子様」 高虎が呼びかけると、横顔を見せていた春子さんがこちらを向いた。 同時に、本を見ていた正面の女性も顔を上げる。 「っ…風吹様っ!」 びっくりした様子の春子さんに、違和感を覚えた。 春子さんの声に、背を向けていた女性も振り返る。 「えっ……風吹様!?」 その顔に覚えがあって、思わず僕も声を上げてしまっていた。 「なっ…なんで詩子ちゃんが此処に…?」 「私は、サークル活動で…」 すると今度は春子さんと詩子ちゃんが顔を見合わせ、もう1人の子は慌てたように本をかき集める。 探偵を見上げる。 まだ難しい顔をして、考え事を決め込んでいる。 「風吹、こちらへどうぞ」 高虎の声に顔をそちらへ向けると、春子さんと詩子ちゃんの間にもうひとつ椅子が用意されていた。 「あ、うん。ありがとう高虎」 椅子を引いて貰ってそこに座る。 「あの、春子さん…。突然お邪魔してしまってすみません」 「いえっ、いいえ。風吹様でしたら何時でも構いません。歓迎させていただきます」 違和感の正体に気付いた。 「探偵様と詩子さんはご兄妹でいらしたのですね。先程まで私たち、互いにそれとは気付かずに風吹様のお話をしておりました。ね、詩子さん、千春さん」 春子さんまで、いつの間にか風吹様呼びになってる。一条様って呼んでくれてたはずなのに。 それに、なんで探偵の話じゃなく、僕の話なんだろう。 それぞれにそれと気付かず僕の話なんて…。 もしかして僕って、セレブの人たちにしてみたらまるで珍獣?そんなに変わってる!?

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