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45.更科邸3

「探偵殿も座られますか?」 「いや、結構」 高虎はいつの間にかテーブルから離れて、入口付近の探偵と会話している。 様子を見るに、どうやらあの2人もあまり馬が合わないらしい。 高虎、他人と仲良くするの、苦手なのかな。 僕、無理矢理「親友」なんて言っちゃって、迷惑してないかな。 「どうかされましたか?」 春子さんが心配げに顔をのぞき込んでくる。 うっ…、肌のきめ細やかさや睫毛、息遣いまでつぶさに感じ取れて……何処を見ればいいのか…視線、が…… 緊張して顔を背けると、今度は詩子ちゃんに瞳までのぞき込まれる。 ち…近い。2人が近いよぉっ!!どうしたらいいんだこういう時!? 「……う~、高虎ぁ…っ」 助けを求めるも、高虎には通じなかったようで返事を一つ、使用人の女性に紅茶をもう2セット用意するよう言いつけた。 「───間抜け」 探偵の、一際大きな声が響いた。 高虎が目を鋭くする。 「睨んでも仕方ない。君が間抜けだから教えてやっただけではないか」 「私の何が間抜けだと?」 それには答えず、探偵はドアへ向かうその人へと視線を向ける。 「ああ、私たちのお茶はいりませんよ。菅原由実さん───いえ、連続殺人犯の執行人R、と呼んだ方がよろしいですか?」 「……っ!?」 振り返ったその人は、制服のポケットに右手を突っ込み、───走り出した。 咄嗟に春子さんの前に立ちはだかる。 けれど彼女が鞘を投げ捨て、ナイフを首筋に突きつけた相手は、 ────僕だった。

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