48 / 211

47.イワナガヒメ2

「───それは許しません」 静かな声だった。 カツン───と音がした。 カツン、カツン…… ヒールと床の当たる音が部屋に響く。 「だめ…」 「殺すなら私を殺しなさい」 皮膚を掻き切らんとする感触。 まっすぐに見据える目。 2人とも、本気だ。 殺す者と殺される者と、それを傍観する人々と─── 皆、動けない。 高虎も、詩子ちゃんも、千春さんも。 冷たい痛み。切れて血液の流れる部分だけが、やたらと熱い。 「青山…」 探偵と目が合う。 「春子さんを助けて、青山…っ」 「───雪光っ!」

ともだちにシェアしよう!