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47.イワナガヒメ2
「───それは許しません」
静かな声だった。
カツン───と音がした。
カツン、カツン……
ヒールと床の当たる音が部屋に響く。
「だめ…」
「殺すなら私を殺しなさい」
皮膚を掻き切らんとする感触。
まっすぐに見据える目。
2人とも、本気だ。
殺す者と殺される者と、それを傍観する人々と───
皆、動けない。
高虎も、詩子ちゃんも、千春さんも。
冷たい痛み。切れて血液の流れる部分だけが、やたらと熱い。
「青山…」
探偵と目が合う。
「春子さんを助けて、青山…っ」
「───雪光っ!」
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