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58.事件のあとに1
あの翌日である。
更科春子は記者会見を開き、父親である更科重行他3名の行いを公表した。
これは法律では何の罪にも問われないことです。
しかし、心で考えて欲しい。
これは、本当に罪ではないのか。放置されるべきことなのでしょうか。
もう30年も前の事件です。事故として処理された事実です。
けれど、その時に見捨てず対処していれば、尊い命は失われずに済んだかもしれない───罪のない3人の女性の命が奪われることも、罪を重ねてしまった彼女の罪も、優しいあの方が巻き込まれて怪我をしてしまうことも───誰も、傷つかずに済んだかもしれない。
誰も、泣くことがなかったかもしれない。
私は彼らを、彼ら4人の行いを、決して認めはしません。
春子お姉様はとても賢明で、とてもご立派でいらっしゃいました、と詩子ちゃんは語った。
そして更科製薬はおそらく、今後創始者一族の手からは離れるであろう事。
春子さんは家を追われ、今はホテルで寝泊まりしている事。
───なんてことをさせてしまったんだろう。
彼女の心を守るどころか、居場所を奪ってしまうことになるなんて。
いや、普通に考えればすぐに分かったことだ。
あの時は思考力が低下していて。
……そんなこと、言い訳に過ぎない。
彼女にあんなことを言う必要はなかったんだ。
僕が自己満足を得るために、彼女を家から追い出したんだ。
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