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小学生時代①-3
「どうしたの?」
「お前、無理してるだろ。」
「……え?なんの話?全然無理なんかしてないよ!ほら!」
僕は出来る限りの明るい笑顔を作って蓮ちゃんの方を向いた。確かに毎日いじめられるのは辛いけど、大好きな蓮ちゃんに心配させたくなくて。
「笑ってんの顔だけじゃん。無理して笑うなよ。俺知ってるんだけど、お前がいじめられてる時いつも震えてんの。怖いくせに、大丈夫なフリしてんだろ?」
図星だった。ちゃんと誤魔化せてるつもりだったから、蓮ちゃんにバレているなんて思わなくて若干焦った。知ったら、蓮ちゃんは僕を心配してくれるって分かってるから。でもそれが蓮ちゃんの負担になるのなんて僕は望んでないから。
「そんなこと……ないよ。」
「いっつも泣くの我慢してんじゃねえんだ。」
「して……ない、よ。」
「ばーか。バレバレだし。俺がお前のこと見つけるといつもお前、下向いてガタガタ震えてたのが、こっち見て超ホッとした顔すんだよ。目とか赤いし。その癖、大丈夫か、って聞くと笑って大丈夫、って言うじゃん。俺も最初は本当に大丈夫なんだろうと思ってたけど、明らか大丈夫な感じじゃねえじゃん。今だって笑いながら手、爪食い込むほど握りしめてさ。」
そう言われて自分の手を見ると、掌にくっきりと爪の跡が残っていた。自分では気付かないうちに手を握りしめていたらしい。
「我慢すんなよ。どうせ今だって泣きそうなんだろ。泣いちゃえよ。」
蓮ちゃんはいつも通りのぶっきら棒な喋り方だったけど、すごく優しくて、自然と涙が溢れてきた。ほんとはいつもいつも強がるのが辛かった。一人で抱え込むのは辛かった。でも蓮ちゃんに迷惑はかけたくなかった。必要以上に心配させたくなかった。
「れん、ちゃ……うぅーー」
出てきた涙を早く止めたくて、必死に目を擦った。これ以上泣いたら蓮ちゃんが困るから。そう思ってたのに。
「おい、そんなに目擦るなよ。痛くなっちゃうだろ。」
蓮ちゃんは僕の手を掴んで、僕の顔を覗き込んだ。
「ほらーもう真っ赤じゃねえかよ。いっぱい泣いていいからさ、な?」
「うぅ……ぐすっ…………怖いの、 山田くんたち。かお、怖いし、いつも、ぶつの……」
「うん」
「で、も……れんちゃ、ん、に、心配かけたく、なくて……」
「うん……て、おい、顔、涙でぐちゃぐちゃだな。ほら、拭けよ。」
そう言って蓮ちゃんは自分の服で涙でびしょびしょになってしまった僕の顔を拭き、頭を撫でた。僕は蓮ちゃんのその行為が嬉しくて、普段以上に感じられる蓮ちゃんの優しさが余りにも暖かくて、でも、伝えられない気持ちが、口に出してはいけない好きが苦しくて、止まりかけていた涙がまた溢れ出した。
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