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愛とか恋とか衝動とか。7

「おい、優、」 ある日の放課後、俺は一人で座っていた優に話しかけた。 「お前さ、他のやつらにあんま触るなよ。」 正直自分でもいきなりこんな言葉を発するとは思っていなかった。ただ、振り向いた優の顔を見た瞬間、咄嗟に口から出てしまったのだった。 「なんだよ、蓮ちゃん、いきなりそんな事言うなんてさ。」 相変わらず目を合わせることなく、俯きながら優が返事をする。 「変だっていうのは分かってんだけど、俺、お前が他のやつらと絡んでるともやもやして気持ち悪いんだよ。なんか気に入らねえっつうか。見ててイライラすんだよね。」 「......そんなことか。ねえ、それってさ、蓮ちゃん俺の事好きってことなんじゃないの?」 そう言うと、俯いていた優がすっと立ち上がり、俺のネクタイを引っ張って俺の顔を自分の顔に近づけた。突然言われたことに、自分でもそれが答えなのかと戸惑いを隠せず、俺は黙ったまま硬直してしまった。俺は優が好きなのか。男など一生恋愛対象になると思っていなかった。この苛立ちは、ただ今までそれらの行為の対象が自分であったのが他に移って気に入らないだけだと思っていた。ずっと小さい頃から知っているこいつへの友情や、一種の執着や依存であると。しかしこれは嫉妬だというのか。 「ねえ、どうなの?答えないとまたキスしちゃうよ?」 真剣で、でも少しいたずらっぽい顔をしながら優はそう言った。その目を見つめていると、俺の心拍数はどんどん上がっていき、目線は微笑む口元に惹きつけられていった。 「......んっ......」 気が付けば、目の前には驚いて目を見開いた優がいた。今日の優の唇は乾いていて少しかさついていたけど、やっぱり柔らかくて、生暖かかった。正直自分でも自らキスをしたなんてにわかに信じがたかった。しかしキスをしたその瞬間、俺の脳には電流が走ったような衝撃を感じ、もっとこのキスしている相手を、優を触りたいと、自分のものにしたいと思った。じゃれるのも、怒るのも、笑うのも、全て相手は俺であって欲しいと。そしてその時俺は今まで感じていた感情の正体はやはり嫉妬であると気付き、初めて他人を愛おしいと感じ、これがいわゆる恋愛感情、誰かを好きになることなのだと認識した。 「好きだ、ばか。」 俺はそう言うと、泣きそうな顔をした優にまたキスを、今度は息が止まってしまうんじゃないかってくらい長く深いキスをした。教室には息継ぎをするときに出る小さな声と、唇や舌が離れる時の水音だけが響いていた。

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