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後日談①-2
帰り道、優と二人で歩いていると、いきなり手を掴まれ恋人繋ぎをされた。つい最近までただの幼馴染だった上にまだ付き合い始めて日が浅いこともあって、今まで優にそんなことをされた事の無かった俺は驚きに身を固まらせた。そしてそのショックが解けると、急に誰かに見られることが気になって、咄嗟に手を放そうとした。しかし優はそれを許さず、強い力で手を握り続けた。
「おいっ。誰かに見られたらっ。」
優の手に込められるあまりにも強い力に、手を振り払うことを諦めて、言葉で出来るだけの抵抗をする。
「いいじゃない、見られても。男が手繋いだらいけないの?」
優は平然と答える。
「いや、そういうことはねえけど......学校のやつらに見られたりして、なんか言われたら面倒だろ。」
「いいじゃん、別に。関係ないでしょ?俺たちは俺たちなんだから。」
ね?と優は俺の顔を覗き込む。
「いいのかよ、付き合ってることバレても。俺たち男同士だぞ?世間に容易に受け入れられる関係じゃねえんだ、悪口言われたり嫌がらせされたりするかも......」
「いいの。蓮ちゃんがどう思ってるのかは分かんないけど、俺はいい。何されても、俺が蓮ちゃんを好きな気持ちに変わりはないし、堂々としていたいよ。」
前に向き直った優の横顔はいつもの甘々でおちゃらけた表情とは裏腹に真剣で、目は力強く、真っ直ぐ前を見つめていた。手を繋ぐなんてことは本来男女ならどうってことない行為だが、それを男同士ですることに俺は後ろめたさを感じ、臆病になっていた。今までも、優にくっつかれたりして周囲に自分たちの関係が悟られそうになる度に、俺はこうやって臆病になり前に踏み出そうとしなかった。俺はそうやって前に進もうとしない事は自分たちの関係を、好きだという気持ちを否定することと何ら変わりないと分かっていながらもそれを見てみぬふりをしていたのだ。しかし今の裕の姿を見て、一人で勝手に臆病になっていた自分があまりにも情けなく感じた。俺は立ち止まり、前を歩く優を引き留めた。
「ば、馬鹿にすんな。俺がお前の事好きじゃないとでも思ってるのかよ。大体、誰かがお前を傷つけようとしたら俺がお前を守ってやるから心配すんな。」
「あれ?さっきまで人に見られたくないって言ってたのは誰かな?何いきなり強気になってんの?」
「い、いや、見られて大歓迎って言ってる訳じゃねえよ?ただ、あれはちょっと不安になってただけで......その......俺だって付き合うなら堂々としたい気持ちが無いって訳じゃねえっつうか......とにかく、何かあれば守ってやるって言ってるんだよ。」
俯いたままそう言うと、優は嬉しそうにふふっ、と笑い、俺の腕を抱きしめた。
「じゃあ、守ってね、蓮ちゃん。」
あいつはニコニコしながらそう言って、俺を置いて、一人で楽しそうにスキップして行ってしまった。俺にはその笑顔があまりにも眩しくて、愛おしくて仕方が無かった。
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