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後日談①-3
「ねえ、キスして?」
優の部屋に入るなり、優は俺を無理矢理ベッドに座らせて、そう言った。
「な、なんだよいきなり。」
驚いて少し後ずさりながらそう言うと、少しでも離れるのは許さないとでも言うように優は俺を強く抱きしめた。
「だって最近してないじゃん。」
優は少し拗ねたような声でそう言うと、俺の胸に顔を摺り寄せてくる。
「それは仕方なかっただろ、お互い時間無くてゆっくり話す時間すらなかったんだし。」
「じゃあ今折角ゆっくりしてるんだし、ね?」
甘える子猫のような目をしてそう言われ、心臓の鼓動が早まる。優のその顔は、あまりにも視覚的に悪かった。童顔で子どものようなのに、その瞳は妖艶で、今にも吸い込まれてしまうんじゃないかと思った。今のこの姿を写真に収めて額縁に入れて飾っておきたいような気持ちになって、こんなにも優は愛おしい存在だったのかと、こんなにも自分は独占欲が強かったのかと思いながら、俺は優の唇に柔らかなキスを落とした。
「もっと。ねえ、もっと。」
少し頬を赤らめながら、優は俺の首に手を回した。その手が触れている場所から、体中に熱が広がっていくのが分かった。
「そんな言い方すんな。俺の理性が持たない。」
「いいよ、持たなく......っん......ぁ......」
優が喋りきらないうちに口を塞いだ。下唇を甘噛みしたとき優が少しだけ漏らす甘い声が堪らなくて、何度か角度を変えては優しく噛み付いた。多分俺はすごく余裕のない顔をしていたけど、もっともっとと求めてくる優もなんだかんだ余裕が無さそうで、俺のシャツをぎゅっと握りしめていた。
「んぅ......ふっ......は、っはぁ......はぁ......」
唇を離すと優はシャツを握りしめたまま目の端を赤らめて息を切らしていた。俺は優の耳の後ろの髪をくしゃっと掴み、首元へキスをした。
「......っ、ちょっと、蓮ちゃんっ。」
「首、好き?」
少し顔を上げて聞くと、優は不貞腐れた様に顔を逸らした。返事が無いので耳を甘噛みすると、優は「ひゃっ。」と小さな声を漏らし体をびくっと震わせた。
「耳も好きなの?」
耳元で低くそう囁くと、優はまた体を震わす。俺はそれが楽しくて、しばらくの間首や耳への愛撫を繰り返していた。
「んーもう!蓮ちゃん!首とか耳ばっか触ってないで他のとこも触ってよ!いつまで焦らす気?!」
そう大きく少し苛立った声で言うと、優は俺を押し倒した。
「お、おまっ、ちょっ......」
シャツの中に手を入れられ、くすぐったさに身を捩る。
「そこはっ、だめだってっ......おいっ......」
「うるさいな......ごちゃごちゃ言うなよ......」
そう言うと優は俺にキスをして黙らせた。少し口を開いた隙に舌で舌を絡めとられ、口内を舐め回される。休むことなく口の中を掻き回され、酸欠で頭がクラクラし始めた。でも、酸欠で苦しい筈なのに、俺の身体はどんどん快楽に溺れていき、優から離れることはできなかった。上顎を優しく舐められる度、俺の脳には電流が走り、今にもショートしそうだった。俺は苦しさと快楽で訳が分からなくなって、こちらから求めることも出来なくなりながらただ優に抱きつきシャツにしがみついていた。
「蓮ちゃん余裕ないなあ。そんなとろっとろな顔しちゃって。頭ん中ぐちゃぐちゃです、って自分から言ってるようなもんだよ?」
唇をゆっくりと離すと優が言った。
「んん......分っかんない......知らねえ......」
回らない頭を最大限回転させて抵抗を図る。自分の言っていることが意味不明だって事くらいは理解していた。
「ねえ蓮ちゃん、抱いてよ......それとも俺に抱かれたい?」
優が俺に跨がりそう言う。「それとも俺に抱かれたい?」と言った時のあいつの顔がやけに自信ありげで、なんだか少し見下されているような気分になって、頭に血が上った。頭なんかやっぱり全然回っていなかったけれど、俺は怒りに任せて優を自分の下に組み敷き、ちょっと抵抗しながらも嬉しそうな顔をする優の姿を見て微かな歓びを感じながらひたすら抱いた。
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