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第4話

 電車から降りてもつまらない言い合いを続けていた俺達だったけれど、気がつけば大学が目の前に見えていて。  今俺の真横を歩く瀬戸は、さっきまでの姿が夢だったのかと思う程、生意気で可愛げがなかった。 「深山君と瀬戸君だ!!」 「二人って友達だったの!?目の保養すぎる〜!」 「キャ、手振ってくれた!!」 「深山君マジ神対応・・・」  駅からここに来るまで、どれだけの人に振り向かれただろう。  普段以上に女子の視線を感じて、俺は改めて瀬戸の人気の高さを思い知った。  そんな女子達に手を降って答える俺とは対照的に、瀬戸はどんな声にも耳を貸さず、真っ直ぐ前を見て俺に悪態を付きながら歩いていた。 「深山・・お前って本当、チャラいな。」 「はぁ?こんなの普通だろ?むしろお前が対応悪すぎだろ。」 「ふーん。まあ、電車で男相手にあんな事してくる変態野郎だもんな、 そんなお前からしたら、知らない女に手を振る位は普通なのかもな。 精々捕まらないように気をつけろよ。」 (俺だって他の男だったらあんな事しねーし!) 「男相手に」なんて言われて、頭に過ぎった言葉は誤解を生みそうで・・  俺はその言葉を慌てて飲み込んだ。  俺、確かにどうかしてたよな・・・  瀬戸が男の癖に妙に色気があって綺麗だったからつい調子に乗っただけで、普通だったらヤロー相手にあんな事想像するだけでも気持ちわりーんだけど。  無言になった俺に、冷ややかな視線を寄越す瀬戸を見下ろして必死に言葉を探す。    このまま黙ったら俺の負けみたいでなんか悔しいじゃねーか!!   「ッ・・・ でも、そんな変態野郎に感じさせられて、アンアン喘いでたのは誰だよ。」  なんとか反撃に出た俺は、余裕ぶってわざとらしくニヤリと笑って 瀬戸のつむじを見下ろした。  どーせ、バカとか変態って罵られるんだろうって思っていたのに、 スグに答えは帰ってこなくて。  少し間を置いて、瀬戸は小さくため息を付いた。 「ハァー・・・俺、お前の事本当嫌いだわ・・・」  何で急にそんなマジなトーンなんだよ・・・  少し間を置いて吐き捨てるように言われたそのセリフが、 何故か妙に心に刺さってしまった。  何も言い返さない俺が気になったのか、チラリとコチラを見上げた瀬戸だったけれど、図書館前のフリースペースに瀬戸の学部の奴らがたむろしているのが見えると、瀬戸はその中の一人に向かって駆け出して行った。 「じゃーな、エロ深山。 由人センパイ、おはようございます!」  俺を見ること無く捨て台詞を吐いて先輩の元に掛けていく瀬戸。    さっきまであんな冷めた顔してたくせに、何だよあの嬉しそうな顔・・・   誰に対してもそっけなくて塩対応の瀬戸だけど、あの由人っていう先輩にだけは心を開いているみたいなんだよな・・・  って、何でこんな事で俺がモヤっとしなきゃなんねーんだよ。  瀬戸が誰になつこうと俺には関係ねーし!  それにしても、エロ深山って・・・  確かに瀬戸の反応が面白いからって、ちょっとやり過ぎたけど、 瀬戸のヤツこれからも普通に外でデカイ声で言いそうで怖えーな・・。    由人先輩の横を歩く瀬戸をぼんやりと見つめながら共通講義棟に向かっていると、 誰かが後ろから俺の腕を取ってスルリと体を寄せてきた。 「泉おはよう〜!」 「何だ、志穂か・・・はよ。」 「何だとは何よ!それより、今瀬戸君と一緒だったでしょ!? いつの間に仲良くなったの?」 「仲良くなってねーよ。」 「ええ〜そうなの?瀬戸君、本当カッコイイよねー。 話してみたいけど怖いって有名だから近寄れなかったよ〜。」 「何、そんなに瀬戸と話してーの?俺の事、好きなんじゃなかったの?」  俺の腕を取ったまま他の男の話・・いや、瀬戸の話をされるのがなんだかシャクで、 絡めた腕を解いて肩を抱き寄せて耳元で囁くと、志保は嬉しそうに俺の腰に腕を回して抱きついてきた。 「あーもーそれズルいよ。泉が一番に決まってるじゃん。ねえ、今夜会える・・?」 「バイト終わり9時だけど、そっからでもいいか?」   「うん!連絡まってるから!」  女の子独特の腕にあたる柔らかい感触と、少し強めに香る香水の香り。    こんな約束をしてるっていうのに、志保の女の部分を感じる度に、瀬戸の控えめな甘い香りや、何も塗っていない真っ白い肌が赤く染まったトコがエロかったな・・・  なんて思ってしまう俺がいて。  瀬戸の癖に生意気だなんて、理不尽に瀬戸にムカついてしまった。

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