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第37話
窓際のテーブルに座り、早速メニューを捲る。
写真で見るとよくわかるが表面に白ゴマをふんだんに使用したパンズから、ハンバーグかステーキかというくらい大きなパティが肉汁を湛えながらはみ出している。
肉だけでなく、トマトやレタス、玉葱などの野菜も大きくカットされ、蕩けたチーズとケチャップが溢れていた。
これはかなりのボリュームだろう。
「これ、美味そう」
「決まりました?」
「うん。このスタンダードってやつ」
「俺もそれにしよっかな。─すいません」
渋澤はすぐ近くの店員に声をかけ、同じものを二つ注文した。
窓際ということもあり座った席はポカポカと暖かく、覆った顔が熱くなる。
既に見られているのだからもういいや、と笹本はマスクを外し畳んでパーカーのポケットに突っ込んだ。
「やっぱり可愛いなぁ。顔の造りがドストライクなんですよね。それに俺にだけ見せてくれる素顔……みたいな」
「また言ってるのか」
渋澤がにへっと笑う。
今まで何回可愛いと渋澤に言われただろう。
しかしどこからどう見ても、可愛いには程遠い地味な童顔だ。
そんなに自分の顔が渋澤好みなのかと考えると不思議でならない。
「渋澤ってゲイなの?」
「そうですね。隠しててもしょうがないんで正直に言います」
あまりにも潔く答えたのでやはりそうなのかというシンプルな感想しか抱けない。
不思議と嫌悪は感じなかった。
「あ、でもだからって誰でもいい訳じゃなくて、笹本さんみたいなショタ風成人男性が好きです」
「しょっ……」
どこで誰がこの話を聞いているのかわからないのに、こんな公衆の面前でこいつは何を言い出すんだ。
笹本は慌てて周囲をきょろきょろと見回した。
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