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第39話

これを友達と言うならば異星人の友達とでも思う外ない。 笹本は色々な角度からハンバーガーを撮影する渋澤を放置して自分のハンバーガーを食べ始めた。 まずははみ出た肉汁たっぷりのパティをナイフで切って口に運ぶ。 じゅわ……と口中いっぱいに香ばしさと肉の旨味が広がり、奥歯でぎゅっと噛み締めるとみるみるうちに溶けるようにして消えていった。 ─超美味い……! 今度はパンズとパティ、レタスにトマトをバランスよくグサリとフォークで刺し大きく口を開けてぱくりと頬張る。 その辺のファーストフード店では食べることの出来ない味に舌鼓を打ちながら、ぱくぱくと、只ひたすら食べ続けた。 何気なく顔を上げたその瞬間、渋澤のカメラがこっちに向けられ、カシャリと写真撮影する音がした。 「笹本さんって口も小さいですよね。かーわいい。……頬張らせてみたいなぁ」 頬張らせるとは……?と、頭のどこかで疑問に思うも、それよりも写真を撮られたことに狼狽えた。 「ちょっと何勝手に写真撮ってるんだよ」 「目の前に笹本さんがいるからいけないんですよ」 「……え?」 何故自分がいけないのか。 そんな馬鹿げたことを考えてしまうくらい、渋澤と話をすると思考力が鈍る。 「友達同士でも写真くらい撮るでしょ。それより俺も腹減ったー」 話を濁されたのは解った。 笹本の顔が好きなのだと渋澤はハッキリ言ったのだからどうせ顔目当てで写真を撮ったのだろうと卑屈に思ったが、もしそうであればそれはそれで別の恥ずかしさが込み上げてくる。 かぁっと下から熱が上り、あっという間に顔も耳も熱くなった。 「脈なしとは思えないんだよなぁ」 ぼそっと渋澤が呟いた。

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