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第40話
「脈……なに?」
「あ、いやこっちの話。笹本さん食うの早いっすね。じゃ俺もいただきまーす」
笹本の食べ掛けの皿を見て渋澤もいそいそとフォークとナイフでハンバーガーを食べ始める。
笹本の胸の中に釈然としないもやがかかる。
本当は聞こえていたのだ。
「脈なしとは思えない」
そうはっきりと。
それは友達以上を望んでいることを意味していると笹本でも理解できる。
笹本自身、渋澤のペースに乗せられ振り回されているのはわかっていた。
だからといって渋澤に恋愛感情などこれっぽっちだって生まれる気配は全くないし、断りきれずにこうして休日を共に過ごすことで渋澤を勘違いさせているとしたら、この友達としての付き合いそのものを見直さなくてはいけないだろう。
─友達と一緒に出掛けるなんて、久し振りだったのに。
恋愛する気はないのに渋澤だけが恋愛感情を持っていたとしたら。
一緒にいるべきじゃないというのが正解なんだろうか。
そう考えると一抹の寂しさが胸を過る。
「この後の予定とか、何か考えてるの?」
聞いたのは笹本だった。
「お友達になった記念でまず今日は笹本さんの好きなことしようかと思ってたんですけど、笹本さんどこか行きたいところ、遊びたいことの要望とかあります?」
「え……と、僕、映画見たいかも」
「映画いいっすね。そういや俺最近何も見てないな。見たい映画あるんですか?」
「僕も映画館は最近行ってなくてテレビで宣伝してるようなタイトルしか知らないんだ。家ではよくDVDレンタルしてほぼ毎晩1本は見るんだけど」
「毎日!?」
渋澤は本当に驚いたようで目を丸くしている。
その表情がおかしくて笹本は思わず口許を綻ばせた。
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