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第42話

こいつは今までどれだけつまらない映画を見てきたのだろうか。 そうは思ったがあまりに渋澤が満足そうな顔をしているので、頭の中でツッコむに止め口に出すのはやめておいた。 その後はふらふらと家電量販店でウィンドウショッピングし、ひとしきり見終えるともう夕方だった。 「夜飯どうします」 「え……いや、僕そろそろ帰る。じゃここで。また明日な」 普段あまり長時間歩かないからか今日はやたらと足が疲れた。それに明日からまた仕事だ。 相手が渋澤だったからか変に気を使うこともなく気楽に過ごせたのは想定外だったし、思ったよりも楽しめた。 笹本がくるりと踵を返そうとするとぐっと腕を掴まれた。 「ちょっと待って笹本さん」 「何?」 「1杯だけ飲んで帰りません?せっかくこうして今一緒に居るわけだし、家帰って1人で晩酌するよりいいでしょ」 「……別にいいけど」 1人で晩酌するのは嫌いじゃない。むしろ好きだ。というか1人で宅飲みするのは大好きだ。 けれどこの時は渋澤のことを考えた。 もしかしたら1人が寂しいのか?なんて。 「俺行ってみたかったところがあるんですよ。けど女子が多いから1人じゃ入りにくくて。だから付き合ってもらえません?」 「……」 どんな店だよと不安が過ったが、笹本は渋々頷いた。 渋澤に連れて行かれたのは路地裏にある一見お洒落なバーだった。 壁に掛けられている看板には、ピンクや緑の蛍光管で象られたパイナップルやオレンジなどフルーツのモチーフが並んでいる。 女の子連れのデートならばわかるが、男1人でこれは確かに入りづらい。 「ここ、フルーツもりもりのカクテルが凄いらしいんですよね。ちょっと興味あって。いいですか?」 確かに渋澤の悪人顔でここに1人で入る勇気は湧くまい。 笹本もフルーツもりもりのカクテルは気になった。

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