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第46話

笹本の目に、小泉はいつもキラキラと眩しく写る。 大して歳が離れていなくとも、学生気分の抜けていない若々しさが羨ましいのか、それとも容貌が優れているから憧れてしまう のか。 きっとどちらともが輝かしく見える要因だ。 じっと見詰めている場合ではないと、笹本はハッとした。 あっちはキラキラとした男女の会合がこれから開かれるのだろうが、対してこっちは悪人顔と子供顔の男(モブ属性)2人。 声など掛けられたら最悪だ。 笹本は気付かれたくなくて、さっと目を逸らした。 笹本のその様子を渋澤は見逃さない。 「どうかしました?」 「いや別に」 大人しくしていれば気付かれない。 それにこの店の売りであるフルーツもりもりカクテルとやらも頼んだことだし、そろそろ会計して帰ってもいいくらいだろう。 「じゃあそろそろ帰ろ……」 渋澤も小泉の存在に気付き、サッとそっちに視線を向けた。 「あ、小泉じゃん。何あいつ……合コンか何かですかね」 「さぁどうだろ。それより出よう」 「そうっすね。俺もこの場所にそろそろ飽きてきたところです」 悲しいけれどどんなに視線を向けたところで気付かれないのがモブ属性。 今までだってそうだった。 街中で知り合いに会ったとしても向こうは大概気付かない。 笹本がテーブルに丸めて置かれた伝票に手を伸ばすと渋澤が一足先に摘まみ上げた。 「実は俺色々資格持ってて。能力給ってやつ結構もらってんですよねぇ。ってことで俺から誘ったんだしここは俺に奢られてください」 自分より給料を多く貰っていると自慢でもしたいのか。いや割り勘だろう、奢られる理由がない。 そうは思ったが、ここで払う払わないの押し問答をする気力はない。 ここは大人しく渋澤に甘えることにした。 「わかった。ありがとう渋澤」 「いえ。……笹本さんマスクしなくていいんですか」

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