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第49話
ラブホに行く!と心に決めたものの、それよりも今度は渋澤の態度が気になった。
笹本の手をぐいぐいと引き、歩調は変わらず速いまま。
明らかに不機嫌丸出しである。
かと言って、中高生でもあるまいしラブホ一つで動揺していると思われるのも癪だ。
ここは然り気無く聞き出してみよう。
笹本がそんなことを考えているうちに路地裏へと入り、辺り一帯がラブホ街へと一変した。
笹本は呆気に取られぽかんとした顔で口を開けた。
派手なネオンカラー。
まるでリゾート地に建設されたテーマパークの中へ誘われたのかと勘違いしてしまうほど派手やかな景色が広がっている。
こんなラブホ街がこのあたりにあったなんて知らなかった。
─す、すげぇ……。何あれ城かよ!?豪華客船ラブパニック……?
中世の城を模したお姫様でも出てきそうな白いホテルや、大型クルーザーのような外観のホテル、ヤシの木に囲まれたリゾート感満載のホテルなど、個性的な建造物があちらこちらにあった。
笹本は平静を装うつもりがきょろきょろと顔を忙しなく動かして、ある意味お上りさん同然の有り様だ。
「どこか気になるホテルでもありました?」
「やっ、べ、別にっ……」
動揺を隠しきれず、笹本の声が上擦る。
すると渋澤がくすりと笑った。
見透かされているような気がして、笹本は口を閉じた。
それからまた少し歩き、漸く渋澤が足を止めた。
「残念ながらこの辺の派手なホテルじゃなくて、俺達が入れるのはここです」
「へ、へぇ……」
そこは何の変鉄もない、地味なビジネスホテルのようだった。
「こんな所ですいません。あっちのお城みたいなホテル入ってみたかったでしょ?」
全く持って渋澤の言うとおりだった。
笹本が興味引かれた建物は全てスルーされ、辿り着いたのはまるで寂れたビジネスホテル。
しかしここであっちの派手なホテルに食い付いては、童貞であることがバレてしまいそうな気がして、笹本はふるふると首を横に振る。
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