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第50話

童貞の呪いにでもかけられたかのように、笹本はくだらない見栄とプライドに縛られたまま、ホテルへ足を踏み入れた。 「ラッキー。空いてる」 中へ入ると意外に今時で、チェックインは部屋のパネルをタッチするだけのオートマチック仕様。 ホテル内はこれまた意外に空きが少なく、渋澤は何の迷いもなく空きランプの点灯している部屋のパネルをタッチした。 すると、ウィーンという機械音が耳に入りその後ガコンッと金属同士がぶつかるような音が鳴り響く。 渋澤がパネルの下にある受け取り口から鍵を取り出したところで、自動で部屋の鍵が送られてきたのだと理解した。 ラブホとはこういうものなのか。 城や船みたいなホテルはまた違うのだろうか。 色々興味を掻き立てられる。 笹本は渋澤の後をついて歩き、古めかしいエレベーターに乗り、3階の一室に入った。 「シャワー浴びます?」 「え……浴びた方がいい?」 「気にならないならいいんですけど。俺笹本さんの匂い結構好きだし」 「えっ!?匂いが好き?……や、やっぱり浴びようかな」 「え、浴びるんすか。もったいねぇな」 「……」 最早渋澤の言葉は理解不能だ。 そんなことより部屋の造りに笹本は目を奪われていた。 ベッドはダブルサイズでその向かい側には大きなスクリーン。 その下にあるリビングボードには、ゲーム機とカラオケのリモコンが。 ベッドの横には小さな冷蔵庫。 小さなシンクの脇にはポットとインスタントのコーヒーセットまで備えられている。 そして何より風呂とトイレがガラス張り。 ─ガラス張りの風呂ってなに!?入ってみたい……! トイレをガラス張りにする意味がわからないけれど、興味と好奇心が羞恥心に勝る。 「1人じゃなんか恥ずかしいし渋澤一緒に入ろう」

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