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第51話
「いいっすけど、ここ風呂屋じゃないですからね笹本さん」
「わかってるよそんなこと」
そうは言うが、笹本は今、目先の風呂に興味の全てを奪われている。
笹本はそのまままるで旅先の温泉にでも入るようなノリで風呂場と繋がる脱衣所へ入り、パーカーを脱ぎ足下の籠に投げ入れた。
続けて残りの衣服もすぽぽーんと脱ぎ捨て何の躊躇いもなく全裸になると、脱衣所に備え付けられているアメニティをチェックする。
一般的なアメニティに加え、種類豊富な試供品サイズであるシャンプー、コンディショナー。
透明なプラスチックのボトルに入っているとろみあるピンクの液体。
シャンプーなどの類にあまり興味はなかったがとろみのあるボトルが気になった。
笹本は早速手に取りボトルを眺める。
その後ろで渋澤も脱衣所へ入り無言で服を脱いでいたのだが、笹本はそれに気付くことなくボトルを手にしたまま風呂場へと突入した。
バスタブを覗き込むと、底に丸いパッチのようなものが規則正しく並んだマットが敷いてあり、笹本は目を輝かせた。
大型の雑貨店で見かけた入浴グッズ。湯の中で起動させると丸いパッチから気泡が出て、バブルバスを手軽に楽しめる優れものだ。
「これ……買おうか迷ったやつだ。こんなところで出会えるとは。よし早速お湯張って試そ……ひぁっ」
雑貨店で見かけて以来久しぶりに目にしたそのマットをじっと眺めていると、するんと尻を撫でられてくすぐったい感覚に腰を捩る。
「な、何いきなり」
「可愛くてつい。お尻突き出して何見てんですか」
「や、これ、使ってみたくて」
「泡が出るやつっすね。いいですよ、やりましょう」
渋澤はすぐにバスタブの栓を占め湯を張り始めた。
渋澤に尻を撫でられて気が付いた。バスタブを覗く為に上体を半分折り曲げて、尻を外に向ける恥ずかしい姿勢。
それを後ろから見られていたなんて。
いくら同性同士でも尻の奥まで見せることなどない。急激に羞恥を覚え笹本は渋澤の隣で顔を赤らめた。
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