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第53話
その後渋澤がゴホゴホッと噎せたので、気管支に唾でも入ったのかもしれないと思った。
噎せた割に渋澤の表情はにやついている。
変態の考えることはよくわからない。
「大丈夫か?」
「っ、ごほっ、だ、大丈夫です。ぶっ、つうか笹本さん準備万端だな。そのボトル貸してください。折角だから使いましょう。使い方知ってます?」
渋澤が笹本の握るピンクの液体ボトルを指さす。
「あぁ……」
何だかよくわからないまま好奇心で持ってきてしまったけれど、このとろみ具合からしてきっと泡風呂を作るためのシャワージェルとかじゃないだろうか。
しかし渋澤は笹本の考えを読み取ったのか笑いながら言った。
「笹本さんそれ泡風呂の素じゃないからね」
「は?」
「ちょっと貸してください」
うつ伏せのまま笹本がボトルを渋澤に手渡すと、渋澤はボトルの蓋を開け笹本の尻に手を置いた。
「っ……」
不意に訪れた感覚にびくんと笹本の腰が跳ねる。
渋澤は一体何をする気なんだろうという不安。しかしそれに勝る好奇心。
初めて何かに挑戦する興奮と期待、不安が入り混じった状態で笹本は胸を高鳴らせる。
「ちょっと冷たいかも」
「ひっ」
ひんやりとした液体が腰周りに垂らされたのを肌で感じた。
続いて渋澤がうつ伏せになった笹本の腿の上に跨って、垂らした液体を伸ばすように腰の上で手を動かす。
お互い全裸で上に跨られているということは、渋澤の一物が笹本の腿に当たっているということで、いつもの笹本であればこんな状態は異常だと思うところだろう。
しかし、襲い来るひんやりぬめぬめの感触が強烈でそこまで頭が回らない。
ぬるぬるとした粘性の強い液体がやけに滑り、ちょっと気持ち悪いかとも思ったが、渋澤の手で腰を撫でまわされると温かくなりなかなか気持ちがいい。
─そうか、これはマッサージ用のローションだったか。
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